昨年度までの研究により、機能性脂質のうち、短鎖脂肪酸では明確な効果は認められなかったものの、中鎖脂肪酸の摂取によりギプス固定にともなう廃用性筋萎縮を一部抑制できることが明らかとなった。これまでのスポーツ栄養学のガイドラインでは、怪我などによる廃用性筋萎縮を軽減するためには、骨格筋の直接的な材料であるたんぱく質の摂取量を増やすことが勧められている。そこで、本年度の研究においては、たんぱく質の摂取量を増やすことと中鎖脂肪酸の摂取を組み合わせることで、廃用性筋萎縮に対する相加効果・相乗効果が得られるかどうか検討することとした。 片脚の座骨神経を切除し、廃用性筋萎縮を生じさせたWistar系ラットに対して、1)普通食、2)高たんぱく質食、3)中鎖脂肪酸配合食、4)高たんぱく質+中鎖脂肪酸配合食のいずれかを1週間摂取させた。その結果、高たんぱく質食、中鎖脂肪鎖配合食のそれぞれによって除神経にともなう廃用性筋萎縮が一部軽減され、さらに、高たんぱく質食と中鎖脂肪酸を組み合わせた飼料(高たんぱく質+中鎖脂肪酸配合食)を摂取した群では、それぞれ単独で摂取した場合に比べても廃用性筋萎縮に対する高い抑制効果が得られた。 以上の結果から、機能性脂質の一つである中鎖脂肪酸を摂取することで、ギプス固定や除神経にともなう廃用性筋萎縮を一部軽減できること、また、高たんぱく質食と組み合わせることで、さらなる抑制効果が得られる可能性が示唆された。
|