研究課題
脂肪酸代謝のコファクターとして機能するカルニチンを先天的に欠損するモデル動物、juvenile visceral steatosis(JVS)マウスを用いて、カルニチン投与がJVSマウスの自発行動におよぼす効果を、エネルギー代謝および中枢神経系への作用の観点から検討した。JVSマウスの自発行動量は、餌を抜くこと(絶食)により、著しい低下を示した。自発行動量の低下したJVSマウスに、カルニチンを1回投与すると、自発行動量は増加し、投与したカルニチンが体内から消失した後も、投与効果は少なくとも2日間続いた。エネルギー代謝からみると、投与したカルニチンが体内から消失した後も、長鎖脂肪酸酸化レベルは亢進を示した。血中ケトン体レベルは、自発行動量を決定する因子ではなく、長鎖脂肪酸酸化は、遊離脂肪酸、肝臓トリグリセリドのレベルに規定されてもいなかった。カルニチンの律速因子であるcarnitine palmitoyltransferase(CPT)1については、検討中である。絶食によるJVSマウスの自発行動量低下について、中枢神経系におけるオレキシン神経活動との関係を検討したところ、視床下部外側野におけるc-Fos陽性のオレキシン神経細胞の割合の低下を認めた。脳脊髄液中に分泌されたオレキシンについて、自発行動量の低下したJVSマウスでは、野生型マウスと比較して有意な低下を認めた。これらの低下は、カルニチンの1回投与により正常なレベルにまで回復したことから、JVSマウスの絶食による自発行動量低下は、オレキシン神経活動の低下が関与すると考える。また、視床下部外側野におけるオレキシン産生細胞は、グルタミン酸作動性神経活動により賦活化されることから、自発行動量の低下したJVSマウスにおける脳内グルタミン酸レベルを検討したところ、その変化を認めた。
2: おおむね順調に進展している
JVSマウスの自発行動に関するカルニチン投与の持続的効果について、エネルギー代謝に関する実験、および中枢神経系に関する実験ともに、おおむね計画のとおりに進展している。
研究計画に大幅な変更はない。JVSマウスの自発行動に対するカルニチン投与の持続的効果に関して、エネルギー代謝については、脂肪酸代謝の調節に関わる因子、とくにCPT1について検討を行う。中枢神経系に関しては、グルタミン酸の関わりについて検討を進める予定である。
中枢神経系における実験として、アミノ酸分析の一部を次年度に実施することになり、その試薬購入費用を次年度に計上することとなった。次年度の使用計画としては、アミノ酸分析試薬の購入である。
すべて 2018 2017
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件)
Sleep Med
巻: 44 ページ: 76-81
10.1016/j.sleep.2017.11.1130
Mol Genet Metab
巻: 120 ページ: 306-316
10.1016/j.ymgme.2017.02.004