研究課題/領域番号 |
15K01625
|
研究機関 | 北翔大学 |
研究代表者 |
沖田 孝一 北翔大学, 生涯スポーツ学部, 教授 (80382539)
|
研究分担者 |
絹川 真太郎 北海道大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (60399871)
横田 卓 北海道大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (90374321)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 骨格筋 / プレコンディショニング / 虚血 / 血流制限 / 運動トレーニング / バイオマーカー / マイオカイン |
研究実績の概要 |
1. 運動能力における直接preconditioning効果の検証(進行中):“ischemic preconditioning”(IPC)は、右大腿部をカフにて加圧し、虚血時間5分、解放4分を1セットとして施行した。プロトコールは、①カフのみ巻いて虚血を施行しないコントロール、②IPC1セット施行、③2セット、④3セット、⑤4セットの5条件とした。各施行後に等速性筋力測定器(BIODEX)用いて右膝伸展筋力および屈曲筋力の測定を行った。各条件はランダムに、7日以上の間隔を空けて行った。この研究では、IPCが最大筋力/筋疲労に与える効果とIPCの必要回数を検証している。 2. 運動能力における遠隔(間接的)preconditioning効果の検証(進行中):上記1と同様の研究デザインを用い「右」大腿部にてIPCを施行し、「左」膝伸展筋力および屈曲筋力の測定を行った。 3. 虚血を併用した運動トレーニング効果のメカニズムの解明(解析中):虚血を併用した低強度レジスタンス運動と低酸素環境での低強度レジスタンス運動による筋力、筋形態および血液生化学指標への影響を比較し、虚血を併用した運動トレーニングが筋肥大を導く要因の解明を試みた。被験者を無作為に常酸素対照群、常酸素血流制限群、低酸素対照群、低酸素血流制限群(各8名)に分けた。低酸素条件は、低酸素室にて空気中酸素濃度12.8%、常酸素は21%で行なった。トレーニング方法は、右下腿底屈運動とし、運動強度は最大挙上重量の20%、1セット30回(2秒に1回のペースで拳上)を2セット、2回/日、3日/週、4週間実施した。初回、最終回のトレーニング前後にて、新バイオマーカーを含む血液生化学的指標の測定を行った。期間前後において同様に血液生化学的測定と右下腿三頭筋の最大筋力および超音波にて筋厚評価を行った。これらの結果は今年度発表の予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「直接的および間接的ischemic preconditioning」については、順調に研究は進んでいるが、当初の予想と異なり、これまでの先行文献のような効果が本当にあるか否か疑問が残る結果となっている。しかしながら、その結果については、いくつかの原因を推測しており、検証する計画を立てている。一方、国内外学会や学術誌における公表は順調に進んでいる。 「虚血(血流制限)を併用した運動トレーニング」については応用方法を発展させ、一部のデータをまとめてWorld Congress of Physical Therapy 2015(シンガポール)に投稿し、acceptされ発表の機会を得た。さらに国際学術雑誌へ投稿準備中である。また心不全患者におけるこれまでの検討は、International Journal of Cardiology(Impact factor 4.036, 2014)に掲載できた。心疾患における一連の成果を評価され、国際学会(EuroPRevent 2015, ポルトガル)および国内学会(第22回未病システム学会、第29回日本冠疾患学会学術集会など)にて招待講演の機会を得た。「骨格筋のコンディショニングと健康状態を反映するバイオマーカーの探索」に関しても、新たなに複数の知見を得て、学会にて発表している(血液生化学的動脈硬化指標の有用性と問題点:介入による体組成変化を踏まえた検討など)。さらに新たな得られた成果について、アメリカスポーツ医学会、日本心臓リハビリテーション学会などで公表予定となっている。
|
今後の研究の推進方策 |
これまでの実験結果により、ischemic preconditioningが有効性を表すには、いくつかの条件が必要である可能性が推測されたため、それらの検証も踏まえた研究を計画している。 1. ischemic preconditioningが効果を示す機序の一つに、虚血によるNO(nitric oxide)産生増加あり、その作用程度にはNOを遊離するドナー(nitrateおよび nitrite)の体内濃度が影響している可能性がある。ゆえにNitrateを含むサプリメント(beetroot juiceなど)あるいは食品の摂取を組み合わせた実験を計画している。 2. NitrateがNOを遊離するNitriteになるには、口内細菌の作用が必要であり、口腔内の衛生状態およびマウスウォッシュなどによる洗浄の影響を受けている可能性がある。ゆえに、マウスウォッシュ施行の有無による効果の差異を検証する実験を計画している。 3. 前述の条件にischemic preconditioningと低酸素室の条件を組み合わせた実験を行い、有効な方法を検証していく。また、ischemic preconditioning施行部位における上肢、下肢の優位性を検証する実験を計画している。 4. 国際論文などにおける積極的な成果公表を計画している。特に先行研究と異なる知見について学会および学術雑誌における結果の公表を適宜行い、研究成果のpriorityの確保をしていく。
|
次年度使用額が生じた理由 |
人件費と血液検査費用が予想より低額におさえられたためである。
|
次年度使用額の使用計画 |
研究水準をより高めるため、血液生化学分析の項目を相応に増やしていく予定である。
|