研究課題
平成29年度は、リポ多糖(LPS)刺激によるマクロファージ(MΦ)の炎症性応答におけるO-結合型N-アセチルグルコサミン(O-GlcNAc)の役割について検討し、以下の知見を得た。1)マウス腹腔滲出MΦ(PEMΦ)をO-GlcNAc転移酵素OGTの阻害剤BADGPで培養し、その活性およびO-GlcNAcレベルを低下させると、LPS刺激によるIL-6とTNF-αのmRNA発現誘導が有意に増強された。2)また、マウスMΦ細胞株RAW264.7にOGT siRNAを導入し、その発現およびO-GlcNAcレベルを低下させた上でLPS刺激したときも、IL-6とTNF-αのmRNA発現誘導が有意に増強された。3)このとき、刺激後1時間までに起こるIκBαの分解とp65のリン酸化には差が見られなかったが、刺激後3時間以降で起こるいずれの反応も、O-GlcNAcレベルの低下で有意に増強されていた。4)一方、PEMΦをO-GlcNAc分解酵素OGAの阻害剤PUGNAcで培養し、その活性およびO-GlcNAcレベルを増加させても、LPS刺激によるIL-6とTNF-αのmRNA発現誘導は影響を受けなかった。5)さらに、PEMΦを高グルコース培養してO-GlcNAcレベルを増加させたときも、LPS刺激によるIL-6とTNF-αのmRNA発現誘導には影響がなかった。以上の結果から、1)MΦのO-GlcNAcは、LPS受容体TLR4下流のシグナル伝達に対して抑制的に働いていること、2)O-GlcNAcは、このうちの早期シグナルではなく後期シグナルを担う情報伝達タンパク質に対して抑制作用をもつこと、3)MΦのO-GlcNAcは基礎レベルが高く、正常血糖レベルでもLPS刺激による炎症性応答に対して抑制効果をもち、逆に高血糖による影響は受けにくいことが示唆された。
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