研究課題
平成29年度は、前年度までに収集した競泳選手の全唾液サンプルを解析し、その結果を報告書にとりまとめた。分析では、試合が行われない安静時、及び、試合当日における唾液中コルチゾール・テストステロン濃度を複数時点で計測しその時系列的変化を分析した。その結果、安静時には、先行研究と同様、早朝に唾液中濃度が高く、次第に濃度が低下するという概日変動パターンが見出された。これに対し、試合当日には、テストステロンレベルの概日変動が消失したほか、ストレス反応を反映するコルチゾールのピークが日中に出現した。これらの知見は、競泳試合当日にかかる過度の精神的・生理的ストレスが、選手の内分泌機能に影響を与える可能性を示唆している。このように、本研究では、3年間の研究期間を通じ、競泳選手の競技力・競技ストレスを反映する可能性があるバイオマーカーを同定することが出来た。これに加え、本年度は、競泳選手の競技成績と脳機能との関連性を分析する為、男女競泳選手計40名を対象とした脳波計測実験を実施した。具体的には、安静時背景脳波、及び、自己抑制能力を必要とするGoNoGo課題と呼ばれる認知課題遂行中の事象関連電位活動を分析し、これら神経生理学的指標と、客観的指標により定量化した競技能力、及び、主観的指標により評価した競争心・ストレス脆弱性等の心理・性格的特徴との関連性を分析している。解析は現在も進めているところだが、これらのデータを基に、競泳選手の個人性を生み出す脳機能部位を同定できるものと期待している。
すべて 2017
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件)
国士舘大学体育研究所報
巻: 35 ページ: 97-99
巻: 35 ページ: 85-87