研究課題/領域番号 |
15K01630
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研究機関 | 東京慈恵会医科大学 |
研究代表者 |
山口 眞紀 東京慈恵会医科大学, 医学部, 准教授 (30271315)
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研究分担者 |
竹森 重 東京慈恵会医科大学, 医学部, 教授 (20179675)
大城戸 真喜子 東京慈恵会医科大学, 医学部, 助教 (30287304)
山内 秀樹 東京慈恵会医科大学, 医学部, 講師 (60220224)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 心電図 / ポリアミン / 体脂肪率 |
研究実績の概要 |
1.特殊(低ポリアミン含有)飼料摂取下でポリアミン無しまたは有の水を与えた群のそれぞれを、更に運動負荷無しまたは有の亜群に分け9-10週飼育した。運動負荷群には回転車輪付きケージにより自発運動を行わせた。この間、体重、摂餌量、摂水量、走行距離を数日おきに記録するとともに、CT撮影を実験前と後に行い心肥大の程度と脂肪量を評価した。また動物を循環系に影響の少ないとされる吸入麻酔剤にて麻酔し、胸部誘導心電図を測定した。ラットの体重を実験開始時に対する比率で評価したところ、運動群のうちでポリアミン摂取群がポリアミン非摂取群に比べて実験終了時(9週間後)の体重が有意に減少していた。おもしろいことに、非運動群では、ポリアミン摂取群とポリアミン非摂取群では実験前後での体重増加の割合には違いが見られなかった。また、この体重の違いの原因を調べるために腰部CT像により体脂肪量を評価したところ、特に運動群においてポリアミン非摂取群の体脂肪率の平均値に比べて摂取群では少なかった。このことから、ポリアミン摂取群では運動時に動員されるいずれかのシグナル経路を活性化することにより有酸素的代謝を促進し脂質からのエネルギー合成が進むものと推測した。また、心電図ではスポーツ性心肥大者に特徴的とされる早期脱分極と類似の波形が運動群で観察されたがポリアミン摂取の有無による違いは現段階では認められなかった。 2.1.で実験に供したラットについて実験前と後に頬部より採血し、血中ポリアミン濃度を測定したところ、血液中のポリアミン濃度は、非運動群ではポリアミン摂取によって数倍に増加していたが非運動群では変わりがなかった。このことも運動負荷がポリアミン代謝シグナルに影響を与えることを示唆した。 これらの結果は体力医学会およびポリアミン学会で発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ポリアミン代謝阻害剤投与下での運動負荷実験は28年度初めの計画見直しにより29年度に先送りとしたが、それ以外の条件下での運動負荷実験は順調に実施することができた。心電図および摘出した心筋の形態から評価した心機能や構造には現在のところポリアミン投与による差は検出できていないが、血液中のポリアミン濃度に各群間で大きな差が見られたことから、外来性に投与したポリアミンは、体の各部位での必要に応じた厳密な濃度コントロール下にあることが示唆され、ポリアミンによる心臓の構造・機能変化は重要ではあるが微妙なものである可能性が考えられる。更に詳細な解析は29年度に持ち越されはしたが、動物実験によるデータ取得については概ね順調に進捗したといえる。 一方単離心筋細胞でのカルシウム、膜電位測定については、対照動物での外来性ポリアミン負荷によるデータは蓄積することができたが、運動負荷後の動物から摘出した心筋細胞についての実験は先送りとなった。
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今後の研究の推進方策 |
1.28年度に終了したポリアミン投与下での運動負荷による心臓の構造・機能変化の結果について詳細な解析を行う。また、体重の減少と体脂肪率の減少の理由を解明していくために、筋の酸化的リン酸化能の測定、血液や臓器(肝臓や筋肉)の乳酸量の測定、ミトコンドリアの形態観察ならびに臓器中のポリアミンおよびポリアミン代謝酵素の活性測定などを合わせ行い、追及していく。また、ポリアミン代謝阻害剤投与下での運動負荷実験を実施する。加えて、時間があれば、ポリアミン学会で指摘された、他のポリアミン投与の効果(スペルミン)を調べる運動負荷実験も実施する。2.運動負荷後の動物から摘出した心筋細胞について細胞内カルシウム動態および膜電位を測定する。
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次年度使用額が生じた理由 |
筋の酸化的リン酸化能の測定、ウエスタンブロッティングによる酸化的リン酸化酵素およびポリアミン代謝酵素の発現量の測定のための試薬と消耗品(約16万円)を28年度末に購入して実験を開始する予定であったが29年度に行うことにしたことにより主にその経費が次年度に繰り越されたため。
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次年度使用額の使用計画 |
28年度末に購入して実験を開始する予定であった筋の酸化的リン酸化能の測定、ウエスタンブロッティングによる酸化的リン酸化酵素およびポリアミン代謝酵素の発現量の測定を、29年度に繰り越された費用(約16万円)を用いて29年度に行う。その他の実験については適宜計画に従って使用する。
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