研究課題/領域番号 |
15K01632
|
研究機関 | 聖マリアンナ医科大学 |
研究代表者 |
藤谷 博人 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 准教授 (50278008)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 骨格筋損傷 / 微弱電流 / 高気圧酸素 |
研究実績の概要 |
骨格筋損傷はスポーツ外傷にてよくみられるが、その復帰には比較的長時間を要し、現場でもまた一般人においてもその早期治癒が常に望まれている。我々は、骨格筋損傷に対して微弱電流がその修復を促進させることを、先行研究 (科学研究費助成事業:基盤C;21500639、基盤C;24500802 )にて免疫組織化学的に検索しその有用性を明らかにした。 本研究の目的は、骨格筋損傷に対してこの微弱電流刺激に、さらに、最近諸家の基礎研究により同様の修復促進効果があるとされる高気圧酸素を加えることで、微弱電流単独よりもさらに早い組織修復が可能となるか検討することである。 初年度(平成27年度)においては、マウス(C57BL/6J)を用いて、無処置(C)群、前脛骨筋(TA)にcardiotoxin(CTX)を注入し筋損傷を惹起させた(X)群、筋損傷に微弱電流を加えた(XM)群、筋損傷に高気圧酸素を加えた(XH)群、そして筋損傷に微弱電流+高気圧酸素を加えた(XMH)群の5群を設定した(各群n=12)。 まず予備実験として、微弱電流刺激を麻酔下にて10μA、0.3Hz、200msecで、週3回、各60分間行い、また高気圧酸素は2.5ATA、100%酸素下にて、週3回各60分実施したが、これらの設定条件がマウスの生育状況に問題が無いことを確認した。 次に当初の計画通り、微弱電流と高気圧酸素の併用効果を検証するための実験系を開始した。上記の群を作成し、CTX筋注後1、2週の時点で各群のTAを摘出し筋湿重量を測定した。組織化学的分析として、液体窒素にて急速凍結させ連続凍結切片(8μm)を作成し、その後HE染色を行い、全群のTAにおける病理学的所見、筋線維断面積、そして中心核を有する筋細胞数を計測した。今後は、免疫染色、各種増殖因子・サイトカイン等の検索をも検討し多角的な検証を目指す。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、骨格筋損傷の修復に対する微弱電流と高気圧酸素の併用の影響について検索し、微弱電流単独、あるいは高気圧酸素単独の影響とも比較検討を行う。 初年度(平成27年度)においては、まず微弱電流の設定内容(我々の先行研究と同条件)を再確認し、また高気圧酸素における小動物用高気圧チャンバーの安全な使用方法、および設定条件を事前に確認した。 次に、マウスの骨格筋損傷モデルを作成し、無処置(C)群、筋損傷(X)群、微弱電流(XM)群、高気圧酸素(XH)群、そして微弱電流+高気圧酸素(XMH)群の5群を設定して実際の実験を開始したが、すでに全群の筋採取(処置後1、2週)を終了し、現在は各検討項目の分析を行っている。 これは当初の計画通りであり、現在までの達成度としては十分に満足すべきものである。
|
今後の研究の推進方策 |
今後も研究計画通り、各群における筋湿重量対体重比、HE染色における筋線維断面積、中心核を有する筋線維数/筋線維数比、そして免疫染色(Pax7、Laminin、DAPI)における筋衛星細胞数/全筋核数、を評価し比較検討を行う。また結果により筋再生に関わる増殖因子・サイトカインの動向、等についても検討を予定する。 本研究において、微弱電流と高気圧酸素の併用により骨格筋損傷の修復がさらに促進されるかを明らかにし、従来からの安静を主とした保存的治療とは異なるより画期的な治療方法の確立を目指す。
|
次年度使用額が生じた理由 |
本研究は当初の計画通りに進められているが、現在行われている検体の「測定、分析」は、平成27年度(11月~3月)と28年度(4月~6月)にまたがっており、この期間内、予定されている消耗品(染色、試薬、等)の使用は時期的にばらつきが出るため。
|
次年度使用額の使用計画 |
研究計画通り、平成28年度の4月~6月の「測定、分析」の期間内に次年度使用額は使用する予定である。
|