本研究の全体としての目的は、筋力トレーニング実施期間中に鍼治療(円皮鍼)を用いたセルフケアを加えることで、それを加えずにトレーニングした場合と比較して、トレーニング効果が上回るかどうか明らかにすることである。昨年度は、H27年度と同様の若年者を対象に、より筋力トレーニングの効果の出現が期待されるよう介入期間を8週に伸ばし、かつ、筋力などのより客観的な測定項目を追加し、さらに鍼施術による心理的な影響を除外するために、鍼先の無い円皮鍼をプラセボ鍼として用いた無作為化比較対照試験を実施した。その結果、右外側広筋厚、左外側広筋厚、垂直跳において群と介入期間で交互作用が認められた。また、介入終了後、両群の対象者に自分に対して使用された円皮鍼には鍼先があったか無かったかどちらだと思うか(真の鍼か偽の鍼か)について質問紙により尋ね、その回答結果と実際に使用された鍼との一致度を、κ係数を算出し確認したところ、一致度は低いと判断された。したがって、本研究で用いた筋力トレーニングに円皮鍼によるケアを加味した介入は、若年者の自重による下肢の筋力を向上させることに影響を及ぼす可能性が示唆された。また、実際の鍼を使用されたことと鍼刺激を受けた実感との一致度の検討から、プラセボ鍼による鍼刺激のマスキングは成功しているものと考えられた。 H29年度は上記の検討をさらに進めるため、対象者数を増やす、あるいは、若年者以外の年代、すなわち中高年者の年代を対象とした同様の介入試験を実施することを計画していたが、研究活動として研究成果発表に重きを置いたことや、対象者のリクルートが円滑にいかなかったこともあり、現在のところ未だ遂行途上である。一方、成果の発表については、本課題に関連する内容について学会等での発表を行うことができ、その点においては研究実績として示すことができたと考えている。
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