食後にストレッチングあるいは歩行運動を行い,血糖値低下作用に違いがあるか検討することを目的とした.運動習慣のない健常成人女性16名を対象とし,食後30分にストレッチングを10分実施する条件,トレッドミル歩行(5km/h)を10分実施する条件,座位安静を保持する条件の計3条件の実験を実施した.血糖値の測定を空腹時,食後30分,60分,90分および120分に実施した.試験食として,カツ丼およびうどん(エネルギー580 kcal,炭水化物80 g)を摂取させた.疲労感,腹痛,吐き気をVAS検査法により評価した. ストレッチングおよび歩行条件の血糖値は,食後30分の値と比較して食後60分,90分および120分に有意な低値を示した(p<0.01).一方,安静条件の血糖値は,食後30分と食後60分の間に有意な差を認めなかった.食後60分の時点の血糖値は,歩行条件が他の2条件に比べて有意に低値を示した(p<0.01).安静条件で食後2時間の血糖値が140 mg/dl以上の食後高血糖を示した者3名は,ストレッチング条件で3人中2人が,歩行条件では全員が140 mg/dl未満に改善した.ストレッチングおよび歩行前後の疲労感,腹痛,吐き気のVASに有意な変化は認めなかった.以上のことから,食後に行う10分間のストレッチングと歩行運動は,ともに食後の血糖上昇を抑制すること,さらに,歩行運動の方がストレッチングと比較して,血糖値の低下作用は大きいことが示唆された.食後10分間のストレッチングは歩行運動と同様に吐き気や腹痛を引き起こさずに実施できることが示された.
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