平成29年度の研究では、短時間の高強度運動の影響を明らかにすることを目的として検討を行った。高強度運動時には、筋の肥大に関する因子や細胞保護に関するタンパク質の発現増加が想定されるが、これが絶食下でも同様にみられるかは不明である。このことは、筋の適応や栄養環境の重要性を理解するうえで重要な情報となることが期待される。 実験には、10週齢の雄Sprague dauleyラットを用い、コントロール群、絶食群、運動群、絶食+運動群の4群に分類した。絶食は24時間とし、その間の飲水は自由摂取とした。高強度運動は、ラットのトレッドミルを用いたランニングによって行った。ランニング速度は40m/minで、時間は10分間とした。運動群と絶食+運動群は、運動終了3時間後に麻酔下で足底筋を摘出した。摘出した筋は、ウエスタンブロッティング用のサンプルに調製し、筋タンパク質の合成に関わる因子、および細胞保護に関わる因子の発現量を検討した。 体重は絶食群及び絶食+運動群で有意な低下が認められたが、筋重量には差は見られなかった。筋タンパク質の合成に関わる因子の検討では、mTORやp70S6Kのリン酸化レベルが運動群で有意な増加を認めた。しかしながら、このような増加は絶食+運動群でも認められ、絶食による影響は明確には見られなかった(絶食群では変化なし)。同様な傾向が、細胞保護に関わるHSP72でも見られた。
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