本研究では、学童期の骨折の実態に着目し、その発生要因を実証的に分析し、骨折予防教育にいかすことを目的としている。これまでに、主体的要因のうち、体格因子としての身長のスパート期における相対的骨脆弱期が要因の一つとして示唆されることを見てきた。 今回は、その時期における学校の教育活動全体で行われる健康教育のうち、学習指導要領に示された内容を教科書記載内容から確認した。小学校体育科(保健領域)、中学校保健体育科(保健分野)、高等学校科目保健について、小学校は3.4年及び5.6年の教科書4種、中学校は3種、高等学校は3種の教科書を分析した。 結果、小学校ではいずれの教科書も、3.4年生で「よりよく成長するための生活・食品の中でカルシウムを取り上げ、骨や歯をつくるもとになると説明していた。また、運動について、体を支える骨と筋肉を取り上げ、資料として健康な骨とカルシウム不足の骨の写真を掲載し、骨粗鬆症を示唆していた。中学校ではけがの手当において、骨折や捻挫の手当について取り上げていた。その他、1種類の教科書では運動の効果と必要性を取り上げ、骨の発達にふれていた。高等学校では、スポーツによるけがの実態について、けがの種類や主な発生要因を取り上げていた。 総じて、骨の発達と骨折の関連にふれていたのは、中学校の教科書1種であり、教科以外の健康教育に於いて指導していくことの重要性が示唆された。小学校の1種にカルシウムの充足と骨の状況を視覚に訴える教材が活用されていたのは評価できるし、中学校の1種について、骨の発達と骨折の関連にふれていたのは、特筆すべき指導内容と評価できた。しかし、いずれにしても、教科保健での指導内容は少なく、学校において成長過程との関連で、科学的根拠を示した骨折予防の健康教育が重要である。
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