研究課題/領域番号 |
15K01646
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
太刀川 弘和 筑波大学, 医学医療系, 准教授 (10344889)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 大学生 / 自殺予防 / 教育 |
研究実績の概要 |
今年度は、大学生への自殺予防教育の国内外の系統的レビューと、具体的な自殺予防教育プログラム作成の準備を行った。 まず、検索エンジンを用いて国内外の系統的レビューを実施した結果、大学生を対象に研究デザインがある介入を行い、アウトカムが記載されていた論文は国内で597編中7編、国外で3,601編中6編にとどまり、大学生の自殺予防教育に関するエビデンスは極めて弱いことが見出された。結果は関連学会で報告したほか、論文化の予定である。 次に自殺予防教育プログラムの作成を目的に、すでにEUで大規模RCT(SEYLE)の結果有効性のエビデンスが出ている自殺予防教育プログラム(YAM programme)について、スウェーデンのカロリンスカ研究所に本学大学院生を派遣して研修を受講し、日本人で初めての研修実施資格を得た。 さらに同研究を主導した研究者1名を招聘し、同プログラムの日本での適用可能性について議論を重ねた。しかし、同プログラムが高校生対象であること、欧米と我が国で文化的な価値観の相違があることより、そのまま翻訳してこれを我が国の大学生に用いるのは困難という結論に至った。そこで、同プログラムを中心に内外の教育プログラムを参照しながら、独自に大学生向けのプログラムを作成し、実施することとした。 現在プログラム内容を作成中であり、来年度は同プログラムをまず本学の医学生に実施するpilot studyを計画している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
エビデンスのある海外自殺予防教育プログラムの概要を入手し、研修資格も得たが、大学生への適用につき課題があり、独自に作成することになったために、プログラムの開発がやや遅れている。 また、プログラムの効果検証のための授業と評価実施を、学内のカリキュラムと合わせるために、コース担当教員との折衝や、倫理的配慮を要する点から時間がかかっている。 さらに当初予定していた全学的な自殺予防のe-learningについても、学内こころの健康委員会で実施の内諾は得たが、内容について他の教育組織との折衝に時間がかかっている。YAM programmeの主眼がロールプレイであることから、講義と別途の知識重視のプログラムを作成しなければならず、作成が遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
研究責任者が所属する医学のM2学生を対象に、教育カリキュラムに自殺予防教育の授業を組み込み、次年度7月に実施することが決定した。そこで教育プログラムをそれまでに開発完了し、7月にM2医学生を対象に同プログラムを実施して効果をみるpilot studyを予定する。対象群として同プログラムと異なる一般的な自殺予防の医学教育を設定し、前後で同じ評価尺度を用いて効果を検証する。同プログラムの短期的な教育効果についてまとめ、学会発表と論文化を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
教育コンテンツの開発を予定して、海外自殺予防教育プログラムの概要を入手し、研修資格も得たが、大学生への適用につき課題があり、独自に作成することになったために、プログラムの開発が遅れた。このため、コンテンツ作成ができず、予算が消化できなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は海外の他の教育プログラムも入手し、自殺予防教育の研修資格者を増やすとともにコンテンツ開発・作成を完了する。また成果を関連学会などで報告する。
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