研究課題/領域番号 |
15K01650
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
阪上 優 京都大学, 環境安全保健機構, 准教授 (50437290)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | メンタルヘルス / 多文化間精神医学 / 予防医療 / 学校保健 / 医療人類学 / 社会医学 / 異文化適応 / 渡航医学 |
研究実績の概要 |
1) 本研究で得られたデータを用いて、留学生のメンタル不調のうち、予後不良群の特徴を解析し、検討を加えた。予後が不良であった群に関しては、概ね二群に大別できた。一つは急性精神病群、もう一つは、ひきこもりなどを伴う抑うつ症状群であった。前者は、渡日後、早期に発病する傾向があり、出身国が日本から観て、地理的・文化的に遠方である傾向が認められた。一方、うつ病関連疾患群に関しては、渡日後、半年以上経過してから発病する傾向があった。出身国に明らかな特徴は認められなかったが、そもそも母国での学校生活への適応に問題がある傾向が認められた。解析では、性別や年齢には、有意な関連性は認められなかった。
2)本研究で得られたデータを用いて、留学生のメンタルヘルスに関する援助希求能力と予後との関連性を解析し、検討を加えた。初診時のGAFの得点が低く、精神医学的な重症度が高いほど、予後は不良であった。また、自力での援助希求行動が取れなかった群ほど、予後は不良であった。さらに、疾患群間での比較では、ICD-10によるF3群よりもF2群の方が初診時のGAFが不良であり、援助希求行動も取ることができていなかった。
3)本研究で得られたデータを用いて、留学生のメンタル不調と日本語能力に関して解析し、検討を加えた。統合失調症関連疾患群においては、日本語能力に関して中等度群に発病が集中しており、日本語が不完全に理解できることと発病との関連性が示唆された。また、うつ病関連疾患群においては、日本語能力との明らかな関連性は認められなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画におけるデータ取得も概ね終了している。既に十分なデータが得られており、現在、データ解析と複数の論文を執筆中である。研究は順調に進捗している。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、本研究の最終年度であり、豊富なデータセットを活かして、できるだけ多くの論文を執筆する予定である。さらに、講演会や印刷物など、アウトリーチ活動も積極的に行い、研究成果を社会に還元していきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
国際学術雑誌への投稿代および英文校正代として見積もっていたが、次年度への繰り越しとなった。
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