研究実績の概要 |
生物にとって塩は必須の栄養素であるが、過剰な摂取は逆に有害なものとなる。塩の過剰摂取を防ぐため、低濃度の塩をおいしい味、 高濃度の塩を不味い味として脳に伝達する仕組みがある。また、おいしい塩味の反応と不味い塩味の反応は、舌の別々の細胞により感知されていることが分かっている。今回、不味い塩味の感度(忌避反応感度)と塩分摂取量の検討を行った。本年度は島根県邑南町にて特定検査に参加した住民約589名より文書によるインフォームドコンセントを得た後以下方法にて検査を行った。方法は0.25%、0.5%、1%、1.5%、2%の食塩水を用意し、被験者には薄い濃度より少量を口に含んでもらい、これ以上濃い塩味は 飲めないと感じた濃度を忌避反応感度とした記録した。また食習慣は塩分チェックシートを用いて調査を行い、加えて随意尿を用いた 1日の塩分摂取量の推定を行った。忌避反応検査の結果、1%、1.5%、2%食塩水で忌避的反応を示した人がそれぞれ14%、26%、47%であった。また2%以上の塩水に対しても忌避的な反応を示さなかった人は13%であった。忌避反応を示した濃度と塩分摂取量にはそれぞれ9.2g, 9,1g, 9,3g, 9,3gであり、相関を認めなかった。しかし、塩分チェックシートのスコアは忌避反応濃度と正の相関が認められ、塩分摂取と忌避反応の間に関連があることが示唆された。またラットを用いた解析ではSHRとその正常血圧対照動物であるWKYを用いて、2 bottle法にて味覚の嗜好性を検討した。その結果甘味・苦味・酸味・うま味では嗜好性の系統差は認められなかった。
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