研究課題/領域番号 |
15K01660
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研究機関 | 高知工科大学 |
研究代表者 |
芝田 京子 高知工科大学, システム工学群, 准教授 (00307117)
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研究分担者 |
佐藤 公信 高知工業高等専門学校, その他部局等, 准教授 (90461384)
武政 龍一 高知大学, 教育研究部医療学系臨床医学部門, 准教授 (20294837)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 姿勢再現 / 慣性センサ / 腰椎系 / 椎間板負荷 / Webサーバ |
研究実績の概要 |
本研究では、3次元姿勢を測定するウエアラブルセンサを開発し、ユーザが正しい姿勢を体で憶え自らの意思で正しい姿勢を維持することをサポートする仕組みを提案することで、姿勢の悪さによる腰痛や肩こり、内臓疾患などを未然に防ぐことにつなげる。具体的には、日常生活中の立位と座位における脊柱の3次元形状を常時測定し、生活パターンと組み合わせて姿勢の良し悪しの時間分布を可視化すること、姿勢改善の自主トレを行えるリアルタイムバイオフィードバックシステムを開発することを目的としている。 H28年度は、3個の慣性センサで測定したデータを基に姿勢を再現する方法を確立した。頸椎C6から仙骨S1までの様々な姿勢を光学式モーションキャプチャで測定し、脊柱を3リンクモデルで近似可能なこと、つまり3次関数でカーブフィット可能であることがわかった。これを基に個人毎に慣性センサを貼り付ける位置をモーションキャプチャによる傾き情報から決定するキャリブレーション方法を確立し、連続的に姿勢が変化する場合でも慣性センサを用いることで矢状面での姿勢の再現が可能である見通しが得られた。 また前年度に引き続き、腰椎系の測定が腰痛予防の観点から重要であることから、動作中の椎間板負荷の推定に適用するための信号処理アルゴリズムを検討した。姿勢の変化の速度を変えた測定実験の結果、腰椎系の体表面形状を円弧の拡張である2次関数に近似するアルゴリズムを新たに提案した。この方法で無意識な座位姿勢の崩れにおける負荷を連続的に推定する被験者実験を実施したところ、時間とともに負荷が増加する傾向が捉えられた。 また、姿勢データを蓄積するWebサーバフレームワークの仕様を決定、構築し、センサ情報を蓄積可能とした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
姿勢のセンサシステムの構築をH27年度に予定したが、個人差や想定以上の大きな動きのため精度が確保できず、H28年度にずれ込んだ。H28年度において、矢状面の2次元姿勢に限定することで、個人毎ではあるが、問題点を解消したセンサシステムを構築できた。3軸に対応する慣性センサを用いているため、3次元姿勢への適用も可能と考える。 当初H28年度に姿勢を可視化するWebサービスの実装を予定しており、小規模Webサーバの試作をH27年度中に完成しスマートフォンとの送受信を可能とするWebアプリの作成を確認したため、H28年度に大規模Webサーバを構築した。しかしながらスマホアプリの完成までには至らず、姿勢の可視化は引き続きH29年度に行うため、進捗が遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
姿勢の再現データを時間分布で表示するスマホアプリの開発を進める。並行して、姿勢センサシステムでは、多くのユーザに適用可能な改良を行う。サーバフレームワークはセンサ数の増加に対応できるよう構築したため、問題はない。改良が難航するようであれば、2次元座位姿勢に限定することも考える。また、センサシステムには、Webアプリにて正しい姿勢との差分を、大きさや指向性を変えた音でバイオフィードバックできる機能を追加する。このとき、正しい姿勢の定義については、一般に提唱されている方法について臨床医との議論、調査を重ね、装着時に鏡や壁を使って規定する校正を取り入れることで簡単化を図り、姿勢矯正システムの全体像を大まかに開発する予定である。 また一方で、腰椎系の負荷で姿勢を評価可能であるか、これまでの実験結果を再検討し、脊柱全体の3次関数近似と、腰椎系の2次関数近似を連動した新しい腰痛評価の提案を行う。可能であれば、システムへの組み込みも実現する。
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次年度使用額が生じた理由 |
国際会議での成果発表が行えず、その旅費が発生しなかった。 姿勢センサシステムの開発の遅れにより、サーバのフレームワーク検討が遅れたため、Webアプリ構築のための実装費が発生しなかった。また、被験者謝金も発生していない。 遅れていた姿勢センサシステムの実装費として検証用物品を購入した。
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次年度使用額の使用計画 |
開発した姿勢センサシステムへのバイオフィードバック機能追加の開発費、Webアプリの構築費、システム有効性検討のため実施する被験者実験の諸経費(謝金、臨床調査費など)に使用する。 また、成果発表を行うための出張費に使用する。
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