これまでの研究で、ストレス負荷法として「隔離飼育ストレス」と「慢性社会的敗北ストレス」について検討を行い、いずれのモデルでも攻撃性が有意に高まっていることが観察され、社会的行動性の低下を見せたことから、不安・うつ状態の亢進が示唆された。また、漢方薬の半夏厚朴湯が隔離飼育ストレスにより誘発された攻撃行動を抑制し、さらにストレスにより誘発された社会的行動の低下を改善することをすでに報告した。 今回、上記を踏まえ、ストレスによる神経伝達物質(セロトニン、ドーパミン)とサイトカイン(IL-6)の関連および半夏厚朴湯の作用について検討を行った。隔離飼育ストレス負荷により、大脳前頭前野のセロトニン、ドーパミンが減少し、脳幹部位のIL-6が増加することが観察され、ストレスによる精神神経病態形成に、神経伝達物質のみならず、サイトカインも関与することが示唆された。半夏厚朴湯はストレスによるセロトニン、ドーパミンの減少を改善し、増加したIL-6を減少させた。 また、ヒトのストレスの検証として、口臭とストレスの相関について検討を行った。口臭で悩んでいる被験者を対象に、口腔ガス(硫化水素、メチルメルカプタン、ジメチルサルファイド)、唾液成分(コルチゾール、クロモグラニンA)および気分アンケート(POMS2)を指標として解析した。口腔ガスが低値な人、すなわち口臭がない被験者の方がクロモグラニンAが高く、気分アンケートにおいても抑うつ感が高く、友好性が低いことが観察され、口臭で悩んでいる人は、実際口臭がなくてもストレスを感じていることが示唆された。
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