本研究は、近隣環境を積極的に活用した身体活動促進戦略を実施し、有効性を検証することが目的であった。1年目(平成27年度)は、介入地区と対照地区を設定し、両地区在住の65歳から84歳までの高齢者に郵送法による全数調査を実施した(平成28年2月)。なお、本研究の主要評価項目は、地区の身体活動量と運動習慣である。 2年目(平成28年度)は、身体活動促進戦略を介入地区で開始した。具体的には近隣環境データを活用したウォーキングマップを作成した。マップは、介入地区の全世帯に毎月1回配布した(平成28年5月から平成30年1月までの21回実施)。また、介入地区では住民を主体とした「歩こう会」を、マップと連動する形で、毎月1回開催した(平成28年5月から平成30年1月までの21回実施)。歩くコースは近隣環境データを活用するとともに、新たな近隣環境データを収集する場としても活用した。3年目(平成29年度)は介入の継続及び、介入後の調査を1年目と同様の方法で実施した(平成30年2月実施)。 結果、介入前後の調査の結果、最終的に回答が得られた調査協力者は、介入地区の介入前調査では365人(回収率43%)、介入後調査では315人(回収率37%)であった。対照地区は、介入前調査では484人(回収率44%)、介入後調査では537人(回収率48%)であった。主要評価項目である身体活動量、運動習慣ともに統計的な有意差は認められなかった。本研究の介入内容のみでは地区の行動変容までは至らなかった。 一方、近隣環境の質問項目の中で、介入地区では「近所で体を動かす人をよく見かける」で「あてはまる」の割合がやや向上傾向にあったことや、チラシ・歩こう会の認知度がともに約九割であったことから、介入内容が地区の住民に周知された可能性はある。地区住民を対象とした身体活動戦略は長期的な介入と観察が必要かもしれない。
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