本研究ではストレス経験の記述(Writing)を短期集中(1回15分、連続5日)して行うことのストレス軽減効果の有用性を、大学1年生を対象とし、寮生活開始初期から半年にわたって生化・心理学的手法を用いて科学的に検証した. 被験者を、自分自身のストレス経験を1日12分・連続5日筆記するWriting群(W群)と、24時間の行動予定を同様に筆記する対照群(C群)にランダムに分けた.POMS(気分プロフィール調査)・STAY(状態-特性不安検査)を用いて各群の筆記行為の前、筆記行為開始半年後に計測し次のような結果が得られた. 1) POMS: “混乱”の得点に関しては、W群、C群の両群の得点に統計的有意差が見られ、実験前、半年後それぞれ低下した(p < 0.05). 一方、“緊張-不安”の得点に関してW群のみ統計的有意差が認められ、筆記前、半年後低下した(p < 0.05).同様に、W群のみ “活気”の得点に統計的有意差が見られ、実験前、半年後活気を示す値が改善した(p < 0.05).2)STAY:普段の不安感を示す特定不安はW群のみ統計的有意差が見られ実験前、半年後で値が改善した(p < 0.05). POMSの結果では、短期集中のストレス経験の記述はストレス軽減効果があることが示唆された.我々の今までの研究(2016)では、低頻度の継続的なWriting(月に1回を4ヶ月)のストレス軽減効果は示されなかったと報告したが短期集中のWritingとは異なる結果となった.これはストレス経験の記述は1ヵ月に1回を数カ月続けるより、数日連続して短期間に実施するとストレス軽減効果が高い可能性があると示唆された.また短期集中のストレス経験の記述は普段の不安感(状態不安)を軽減する効果があることが示唆され、心の健康状態を維持に寄与する方法であることが推察される。
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