研究課題
平成25年の厚生労働省「国民生活基礎調査の概況」によると便秘の有訴者率(人口1000対)は全体では37.8、男女別だと男性26.0・女性48.7となっており、男女で合計400万人以上の人が便秘を訴え、かつ女性は男性の2倍近くの有訴者率を示している。一方、向野らは機能性便秘患者に対して、耳甲介腔への鍼(はり) 刺激で便秘が改善することを報告している。しかしながら、鍼による施術は医師とはり師にのみ認められている行為であり、体内に鍼を刺入することから、痛みのイメージ、安全性や衛生面などから利用に慎重になる可能性もある。これらに対して、先行研究では身体に刺入しない非侵襲性の皮膚刺激ツールで自律神経反射を起こし、鍼と同等の効果が得られる可能性を報告している。そこで本研究では、非侵襲性の微細突起の皮膚刺激が便秘に及ぼす影響について、二重盲検比較試験を用いて検討することを目的とした。対象は研究趣旨に同意が得られた便秘傾向者44名で基礎疾患で通院している者や現在服薬中の者は除外された。方法は微細突起を耳甲介腔に各自貼付するS群(23名)とプラセボP群(21名)の2群に二重盲検化試験を実施し、日本語版便秘評価尺度(CAS-J)、心理テスト(POMS2)、唾液アミラーゼ活性値(SAA)で比較検討した。結果として、CAS-JはS群,P群でそれぞれ有意に低下した。両群間に有意差はなかったが、S群は介入後にP群に比べ低値となった。POMS2はS群に有意に低下が認められたが、P群に差はなかった。SAAは介入後のS群とP群の差分で有意差が認められた。以上の結果から、非侵襲性の微細突起の皮膚刺激により便秘、POMS2、SAAの改善の可能性が考えられる。また、簡便かつ安全に使用できるため、特にセルフケアの一手段として活用できる可能性を示唆する。
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Medical Acupuncture
巻: Feb 1; 30(1) ページ: 25,32
10.1089/acu.2017.1256.