研究課題/領域番号 |
15K01674
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研究機関 | 武庫川女子大学 |
研究代表者 |
村田 成範 武庫川女子大学, 薬学部, 准教授 (80280999)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 遺伝子教育 / スポーツ障害 |
研究実績の概要 |
本研究における初年度の教育活動として、高等学校3校(2回の実験講義含む)、所属大学の初期演習等6回、小学校主催2回(小学生対象、一部保護者)に対して、本研究が対象とする遺伝子検査・遺伝子教育を含むゲノム科学リテラシーセミナーを開催した。高校では指導教員との意見交換により、事前・事後の遺伝子に関する授業の一環として実施することにより、技術としての実験だけでは得られない、生徒の遺伝子への意識改革に於いて少しずつではあるが効果を実感できた。大学では初年時教育の一環のため、アルコール健康教育も含めた遺伝子リテラシーセミナーの中での実施となった。遺伝子と形質を説明するためにアルコールパッチテストの実証論文を作成したので、スポーツ関連遺伝子も含めた教材を新たに策定した。薬学科および健康・スポーツ科学科での実施では、遺伝子そのものや遺伝情報の利用法について、より具体的な意見・感想が多かった。遺伝子検査と同時に過去の熱中症あるいはインフルエンザ等の高発熱時に関するアンケート調査も行い、それぞれの項目と遺伝子タイプとの相関性を検証した。特定の遺伝子タイプと重症化について傾向としては関連性が見られたが、重症事例が少ないため統計的信頼性を得ることができなかった。来年度以降も継続してデータを収集する必要がある。研究期間後半では小学生にも対象を広げて「遺伝と個性」に関する啓蒙活動のなかで実施し、本教育研究のもう一つの主旨である「次世代の指導者を育てる」ことの重要性と難しさを再認識した。 教育効果測定では、大学に於いては健康・スポーツ科学科があるため、遺伝子検査の結果を今後の競技生活の中でどのように活かしていくかという効果測定が可能である。本年度に遺伝子検査を受けた学生に対して、研究期間中に追跡調査をするために、過去のアンケート項目を参考に効果測定用のアンケート作成を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
遺伝子に関するリテラシーセミナーおよび出前実習に関してほぼ研究計画通りに実施できた。高校では、講義のみ、実験をメインにしてその内容を講義する、講義メインで模擬実験を間に挟む3パターンを実施できたこと、実験をした学校では本学出身の理科教員が在籍していたため、実施前から授業の進行状況の中で出前講義が果たす役割を確認できたことで、遺伝子教育の効果と、今後の改善のための課題を得ることができた。大学では健康・スポーツ科学科および対照群としての薬学科の学生協力により、遺伝子タイプと熱中症重症化に関する相関解析が可能になった。遺伝子頻度分布の偏りにより統計的有意性が得られていないため、来年度も継続してデータ収集を行うことで、教育する上で実証が得られたデータを用いる説得力のある教育ツール開発へと繋げられると考えている。小学校では、遺伝子の多様性に関する説明の中で、運動や熱中症、インフルエンザ等の発熱時の症状について話をすることで、これまではアルコール等の周囲の大人をイメージする教育であったものが、自分自身の遺伝と体質に関する具体例として実感できるようになり、教育効果の向上が期待された。教材としての提示方法を工夫して実際の運動や学校生活に活かせる講義内容に改良する必要があることが、今後の課題として明らかとなった。またその効果を測定するためのアンケート作成にも着手する予定である。 以上より遺伝子教育・遺伝子検査のリテラシー教育という観点から1年目の目的をほぼ達成できた。
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今後の研究の推進方策 |
本年度開始した高校での出前実験・講義について、更に範囲と対象者を広げて実施していく。前年度に実施した高校での継続的な実施のみならず、運動部(文系志望者も含む)を対象にしたスポーツ関連および熱中症関連の授業・指導についても高校の関係者と連携して開催できるよう積極的に関与していく。本研究の申請趣旨とは少し離れるが、運動部の指導教員のプライドも尊重して、指導教員との密接な連携の下で理解を得ることで、指導教員も学ぶ機会として機能できるようプログラムを策定する。 大学初年時教育では、スポーツや熱中症の遺伝教育を継続的に実施する。しかし20歳前後ということもありアルコール健康教育がメインとなってしまうことは否めない。そのためスポーツ・熱中症関連遺伝子解析および障害・重篤化に関するアンケートへの協力をお願いできるのは、健康・スポーツ科学科と申請者が所属する薬学科になる。初年度のデータである程度の傾向は見られたため、これを統計的に解析できる母数にするために毎年の継続が必要である。 小学校では初年度は試行の段階であったが、今年度は教育ツールの開発も含めたプログラムの策定にとりかかる。養護教諭や学校薬剤師との連携で始めた教育活動のため、アルコールやタバコといった有害物質の排除目的があり、これらの教材との連携が課題である。
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