研究課題/領域番号 |
15K01679
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
亀尾 聡美 群馬大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (40312558)
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研究分担者 |
小山 洋 群馬大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (30143192)
井上 顕 群馬大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (40469036)
星野 泰栄 群馬パース大学, 保健科学部, 講師 (90398529)
岩木 直 国立研究開発法人産業技術総合研究所, その他部局等, 研究員 (70356525)
七里 元督 国立研究開発法人産業技術総合研究所, その他部局等, 研究員 (20434780)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 疲労 / 夜間 / 微量元素 / 亜鉛 / 酸化ストレス / 食生活 / フリッカー / アミラーゼ |
研究実績の概要 |
本研究は、夜間勤務の疲労を早期発見するために、疲労の程度を客観的に、かつ簡便に評価し、食生活状況および微量元素栄養との関連を明らかにすることを目的とする。平成27年度は、3年計画研究の初年度であったが、夜間疲労評価を病院にて実施するのに先立ち、夜間疲労の評価方法を検討するために予備調査を行った。 夜間疲労負荷の方法として、慢性疾患の無い健康な男子を被験者として、デスクワークによる連続的疲労負荷(22時-4時の6時間)を行った。計3回の(1回目(疲労負荷前):9時-11時、2回目:24時前後、3回目:翌朝4時前後)採血および客観的疲労計測指標(フリッカー値、唾液アミラーゼ測定)および主観的疲労調べ(Visual Analog Scale: VAS)を行った。フリッカー値の測定は、プログラム(FHM社製)を用いてPC液晶画面にて行った。唾液アミラーゼはニプロアミラーゼモニターにて測定した。採血した血液から血漿を分離し、後に血漿中亜鉛(Zn)、セレン(Se)、および銅(Cu)を、マイクロウエイブ灰化後にICP-MSを用いて測定した。また、血漿SelPは、ELISA法にて測定した。 客観的疲労指標であるフリッカー値は、疲労で減少し、唾液アミラーゼ測定値は、疲労により上昇することが知られているが、両者の値は、有意な負の相関を示した。フリッカー値および唾液アミラーゼ値は、夜間においても迅速にその場で測定することが可能であり、有効な疲労測定評価法となることが示唆された。主観的疲労指標であるVASは、個人差も大きく、慎重に評価すべきであり今後も被験者数を増やし評価の検討を続けていくことが望ましいと考えられた。血漿中微量元素については、Znは時間経過による変動が見られ、生物学的指標になる可能性が考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度は、夜間疲労評価を病院にて実施するのに先立ち、夜間疲労の評価方法を検討するために予備調査を行い、フリッカーテスト、唾液アミラーゼ測定などの客観的疲労指標の検討、生物学的指標の検討を行うことができた。しかしながら、当初計画にて行う予定であった病院での調査について、対象病院を変更することとなり、諸手続きなどに予定よりも時間を要したことにより、当初の計画よりやや遅れている。その後は、対象病院の看護部との打ち合わせを重ね、順調に準備を進めているところである。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、病院での本調査の実施を進めていく計画である。 (1)調査対象および基本調査は、以下の通りである。1)調査対象:群馬県内の病院にて、看護師の夜間勤務時、2交代夜勤の夕方から翌朝までの夜間勤務の時間帯に調査を実施する。病棟看護師30名の実施を予定する。2)基本調査:夜間勤務の月毎の回数、夜間勤務時の仮眠の有無および時間などを質問紙により調査する。調査の実施方法と採血は、以下の通りに行う。1)調査の実施方法:疲労評価調査および採血について16時を1回目として、開始時、中間、夜間勤務の終了時の計3回実施する。血液を回収したのちに遠心後、血清または血漿に分離し、マイナス80℃の冷凍庫に保存する。 (2)疲労評価は、以下の様に行う。1)客観的疲労評価1:フリッカーテスト:プログラム(FHM社製)による新方式フリッカーテストを用いて継時的に疲労の計測を行う。2)客観的疲労評価2:急性のストレス指標として唾液アミラーゼを専用の唾液アミラーゼモニターにて測定する。3)客観的疲労評価3:慢性のストレス・疲労指標として知られている血中のコルチゾールの測定を行い、夜間勤務時間での変動を分析する。4)VASによる主観的疲労評価を行い、客観的疲労評価との関連を調べる。 (3)食生活状況との関連、つまり栄養状態について調べるために食生活状況調査を質問紙により行い、後日回収し解析する。 (4)保存していた血漿サンプルは、マイクロウエイブ装置を湿式灰化後、ICP-MS装置を用いて亜鉛・セレン等の分析、およびメタロチオネインについて、ELISA法および、HPLC-ICP-MS法を用いて分析を行う。抗酸化力および、酸化ストレスの程度を把握するために血中抗酸化物資および、脂質酸化生成物測定を行う。疲労指標とこれらの生物学的指標・酸化ストレスの指標などの関連性について解析を進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画にて行う予定であった病院での調査については、対象病院を変更することとなり、諸手続きなどに予定よりも時間を要したことにより、当初の計画よりやや遅れている。そのため、対象者への謝金費用、研究分担者が行う予定であった血中成分の各種の分析等の費用を次年度に繰り越すこととした。
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次年度使用額の使用計画 |
病院での疲労調査を平成28年度に実施するために、これらの繰り越した額は、対象者への謝金および、血中成分の各種の分析、例えば、血漿中のメタロチオネインについて、ELISA法および、HPLC-ICP-MS法を用いて分析を行うがそのための費用、また、血中抗酸化物資および、脂質酸化生成物測定については、抗酸化力および、酸化ストレスの程度を把握するために血漿中の(α-Tocopherol (α-T)、coenzymeQ10 (CoQ10) )、リノール酸由来脂質酸化生成物 (HODE)および、コレステロール由来酸化生成物を分析するが、その費用として使用していく計画である。
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