研究課題
多機能化していくスマートフォンの現状に合わせ、既存の携帯電話依存やインターネット依存を測定する尺度を参考にして、スマートフォンに焦点を合わせた携帯電話依存度を測定する43項目から成る質問票の原案を作成した。次に同意を得られた医療系の大学生169名を対象にし、スマートフォン依存スケールを開発する目的で、年齢、性別、学科などの基本的属性、睡眠時間、運動習慣、勉強時間、飲酒習慣などのライフスタイル、スマートフォンの平日・休日・夜間の利用時間等に加え、スマートフォン依存度を測定する尺度から構成された自記式質問紙調査を実施した。有効回答した149名の学生に関して、スマートフォン依存度を測定する尺度の因子分析を繰り返し行ったところ、29項目から成る最終版が確定し、①離脱症状、②長時間の使用、③スマートフォンによるコミュニケーションの優先、④スマートフォン使用による授業への集中困難、⑤身体症状という5つの因子が抽出された。また、この尺度の信頼性をみるため、Cronbachのα係数を算出したところ、0.916という高い値が得られた。さらに、スマートフォン依存スケールの総得点と平日および休日のスマートフォン使用時間とのSpearmanの相関係数を算出したところ、各々0.32 (p < 0.001)、0.34 (p < 0.001)で有意な相関があった。加えて、午後10時以降にスマートフォンを使用する時間が長いほど、また布団に入ってからスマートフォンを使用する時間が長いほど、スマートフォン依存スケールの総得点が有意に高かった。これらの結果から、今回開発したスマートフォン依存スケールは、信頼性および妥当性があることが示唆された。
4: 遅れている
スマートフォン依存スケールを開発するための調査が当初の予定よりも遅れたために、その後予定していた、約400名の大学生に対するスマートフォン依存傾向、睡眠調査(ピッツバーグ睡眠調査票、朝型・夜型質問票)、スマートフォン使用状況、抑うつ度等に関する自記式質問紙調査を実施することができなかった。その結果、スマートフォンの使用時間と睡眠の量・質・位相、夜型の度合いおよび抑うつ度との関係の統計学的な分析にまで至らなかった。また、10名の大学生を対象にした、ピッツバーグ睡眠調査票および朝型・夜型質問票による自覚的睡眠・覚醒リズムとActiwatchによる客観的な睡眠・覚醒リズムの測定の比較を行うことができなかった。
睡眠に関する主観的および客観的な情報を得るために、医療系の大学生を対象にして、自記式質問票およびActiwatchを使用した測定を行い、スマートフォン依存度と睡眠の質・量・位相との関係を分析する。また、合わせて抑うつ状態についても自記式質問票を用いた調査を行い、スマートフォン依存度が睡眠および抑うつにどのような影響を及ぼしているかを明らかにする目的で、多変量解析による分析を行う。さらに、夜間にスマートフォンを頻繁に使用する群とそうでない群、またスマートフォン依存度の高い群と低い群で、Actiwatchで測定した睡眠・覚醒リズムや睡眠の質・量、活動量および照度を比較し、スマートフォンの夜間における過剰な使用や依存が睡眠にどのような影響を及ぼすかを検証する。加えて、夜間にスマートフォンを頻繁に使用する群とそうでない群、またスマートフォン依存度の高い群と低い群で、抑うつ度を比較し、スマートフォンの夜間における過剰な使用や依存が抑うつの危険因子になるかどうか検証する。
購入予定だったActiwatchの台数を減らしたため、また購入予定だった質問票を今年度は購入しなかったために、今年度の使用額が減少し、次年度使用額が生じた。
研究分担者の井上が、島根大学から群馬大学に転勤したことにより、研究打ち合わせに必要な旅費が当初予定していたよりも増加することになるので、研究打ち合わせのための旅費として使用する計画にしている。また、学会発表や論文投稿料としても使用する。さらにActiwatchの購入台数を減らした分、レンタルする予定にしており、レンタル料として使用する計画にしている。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 2件)
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