研究課題/領域番号 |
15K01683
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
吉原 正治 広島大学, 保健管理センター, 教授 (20211659)
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研究分担者 |
日山 亨 広島大学, 保健管理センター, 准教授 (00359887)
佐野 眞理子 広島大学, 総合科学研究科, 教授 (80206002)
岡本 百合 広島大学, 保健管理センター, 准教授 (90232321)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 障害学生支援 / 合理的配慮 / 高等教育 / 保健管理 / アクセシビリティ |
研究実績の概要 |
大学には年齢,国籍,社会経験など多様な学生が在籍し,疾病や障害のある学生に対して,大学は修学に必要な合理的配慮を行っている。疾病,内部障害,精神障害,発達障害等は個人差も大きく,支援・配慮内容について一定の基準を定めがたく,個別の相談によることも多い。本研究では,大学における修学支援の向上のために,支援・合理的配慮に関して,より適切な内容と方法を明らかにすることを目的とした。平成27年度は,支援内容の調査,方法例の収集ならびに課題整理を行った。これまで報告された大学における障害学生修学支援の多機関調査の結果について解析し,他大学施設との意見交換も行うこと等により,課題整理を行った。支援内容は「教務支援」と「心身支援」に大別した。「教務支援」は,教育・学習に直接関係する支援で,授業支援,情報保障,試験の特別措置など,一定基準で行う体系的支援である。一方「心身支援」は,個々のニーズ・状態に対する個別支援であり,健康,コミュニケーション,対人関係,社会的スキル等に係ることなどである。これらのバランスは個々に異なる。支援実施にあたっては,所属部局教職員,アクセシビリティセンター(障害学生支援室),保健管理センターほか様々な部署の連携が必要である。「教務支援」では,情報保障に関連する支援者確保,技術育成等が課題であったが,「心身支援」の場合には,障害内容に関する情報共有の難しさ,配慮願いの申し出がない場合の対応,周囲への説明が困難な場合,具体的な合理的配慮の範囲,内容が不明確である場合など様々であり,情報共有の手順,内容,作業分担の調整なども検討する必要があった。今後さらに他機関調査も進め,課題の整理を継続する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
これまで,他施設の状況の調査については,全国調査も参考に,直接訪問による意見交換も行った。あわせて文献により調査を進めた。成果の一部は保健管理関連研究会で2回の発表を行った。「障がい学生支援における合理的配慮と調整に関する検討」ならびに「障がい学生支援における保健管理センターとアクセシビリティセンターの連携と課題」である。また,「障がい学生支援における合理的配慮の調整過程に関する考察」を論文報告した。以上より概ね順調に進んでいる。これからは,他施設調査・文献精査など課題整理を進め,合理的配慮の向上のための基準作り,そのための検討材料となる仮想支援事例の作成を行っていく。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度の実施項目は,支援に関して事例の検討と課題の整理の継続,ならびに大学における合理的配慮の検討のための支援案・仮想支援事例の作成である。 (1)他機関調査,結果解析,課題整理も進め,心身の疾病・障害等のある学生の修学支援状況を解析し,実施されている支援内容についてまとめる。同時に,文献的検討,他施設訪問調査も継続し,検討を行う。(2)支援状況の調査から得られた内容を整理し,合理的配慮の内容,基準作りの試案(たたき台)の作成を行う。想定される支援には,教務支援(授業支援,情報保障,試験の特別措置など教育,学習に直接関係する支援),心身支援(疾病や障害に対し個別のニーズに対応する健康支援,社会性・コミュニケーション支援等)などがある。心身の疾病・障害等のある学生への必要な支援を行うことの仮想支援事例を作成する。仮想支援事例では,同時に情報共有についても検討する。情報共有は支援に重要な要素であり,組織・担当者間での情報共有,連絡・連携のあり方についても仮想支援事例を作成する。 これらの仮想支援事例について,支援内容範囲の妥当性を評価することで,基準の指標づくりに用いる。それぞれの仮想支援事例は,支援について「適当・不適当」など段階的にグレードを設け,合理的なものとして考えられる基準案作成を試みる。合意形成は,保健管理,支援に関する専門家を複数選定して行い,中間報告としての成果等については,保健管理・障害学生支援関係の学会,研究会等で報告発表を行う。
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