研究課題/領域番号 |
15K01688
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研究機関 | 北海道医療大学 |
研究代表者 |
本家 寿洋 北海道医療大学, リハビリテーション科学部, 教授 (80708610)
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研究分担者 |
小林 法一 首都大学東京, 人間健康科学研究科, 教授 (30333652)
山田 孝 目白大学, 保健医療学部, 教授 (70158202)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 楽しさ / 高齢障害者 / 認知機能 / BPSD |
研究実績の概要 |
昨年の推進方策に基づいて、余暇活動の種別ごとに楽しさプログラムを作成する研究として、LAESを使用して旅行の楽しさの特徴を明らかにして、その結果よりプログラム開発を試みようと検討した。その結果、高齢障害者20名から抽出した過去に経験した旅行の楽しさの特徴は、LAESの5つの構成概念で考えると、<過去・現在・未来に想いを広げる楽しさ><人とかかわる楽しさ>の2つであることが明らかとなった。 さらに、アルツハイマー型認知症の高齢者6名の手工芸の楽しさの特徴をLAESを使用して検討した。その結果、<過去・現在・未来に想いを広げる楽しさ>の得点の中央値が、他の4つの楽しさ概念よりも高い傾向にあることから、この楽しさがアルツハイマー型認知症の手工芸の楽しさの特徴であることが推測された。 一方で認知症や心疾患に伴う高齢障害者に対して、LAESを使用して探索的な楽しさプログラムを実施して効果を検討する事例研究を実施した。うっ血性心不全に伴う廃用症候群を呈した90歳代の女性に、草取りの楽しさをLAESを使用して検討した。そこから、草に触れることへの触圧覚を楽しむという現在に想いを広げる楽しさと、草取りを努力して実施したのちにきれいになったことを実感してもらう達成感による楽しさを提供したところ、歩行距離の拡大、移動や立位の自立度向上、認知機能の改善が見られた。 認知症の事例研究では、中等度認知症高齢者2名に対して塗り絵の<考える楽しさ>と散歩の<人とかかわる楽しさ>を実践すると、2名のHDS-Rは11点→21点 9点→18点に改善し、MMSEは18点→22点、12点→21点に改善し、2名ともBPSDが改善した。 また、重度認知症高齢者1名に、詩吟の<過去・現在・未来に想いを広げる楽しさ>と<達成感の楽しさ>を実施すると、HDS-Rが6点→12点に向上した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
以下の3点が研究の進捗が遅れた要因である。 1)昨年に引き続き、LAESのデータ収集を東北、関東、北陸、近畿、中国、九州地方からデータ収集を実施することを計画したが、プログラム開発に必要な探索的な事例研究と、余暇活動の種別ごとの研究と研究発表の準備に時間がかかり、実施することができなかった。 2)余暇活動の種別ごとに楽しさプログラムを開発する予定であったが、データ数が集まらずに、楽しさプログラムを作成し、検証することができなかった。 3)楽しさプログラムの作成において、当初余暇活動の種別ごとに作成しようと計画していたが、余暇活動の種類が多すぎること、手工芸やスポーツ活動という種別でプログラムを作成しても、活動ごとに様々な特徴があるため困難ではないかと考えるようになった。そのため、種別ごとの楽しさプログラムではなく、5つの楽しさの構成概念ごとの楽しさプログラムを開発することに変更するという考えに至るまでに時間がかかってしまった。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、LAESのデータ収集を実施して、余暇活動の種別ごとにではなく、余暇活動の5つの楽しさの構成概念を使用して、5つの楽しさ構成概念ごとに、楽しさプログラムを探索的に作成および実施して、楽しさプログラムのマニュアル作成へと進めていく予定である。つまり、これまでのLAESで語られたデータを質的に分析して、<過去・現在・未来に想いを広げる楽しさ><人とかかわる楽しさ><達成感による楽しさ><考える楽しさ><心身が肯定的に変化する楽しさ>の5つの楽しさプログラムを作成し、実施していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
データ収集が予定より大幅に遅れているために、旅費および人件費・謝金を使用できなかった。そのため、今年度はデータ収集、プログラム開発、プログラム実施における旅費、人件費、会議費、データ収集のためのインク代などの印刷費、マニュアル作成費、データ収集のための動画撮影等のSDカード等で使用する予定である。
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