研究課題/領域番号 |
15K01689
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研究機関 | 東京国際大学 |
研究代表者 |
麓 正樹 東京国際大学, 人間社会学部, 准教授 (40339180)
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研究分担者 |
西平 賀昭 筑波大学, 体育系(名誉教授), 名誉教授 (20156095)
東浦 拓郎 亜細亜大学, 国際関係学部, 講師 (50436268)
碓井 外幸 東京国際大学, 人間社会学部, 教授 (60389822)
小宮山 伴与志 千葉大学, 教育学部, 教授 (70215408)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 脳波 / 気分 / 間欠的高強度運動 / 覚醒レベル |
研究実績の概要 |
アスリートではない一般健常者や生活習慣病の疾患者に対し、短時間の間欠的高強度運動を実施すると、低強度から中強度で行われる持続的な持久性運動と同様の心血管機能と筋代謝機能の改善がもたらされることが報告され、注目を集めている。しかしながら、短時 間の間欠的高強度運動を一般健常者や疾患者に対して行わせることには、心理的な耐性や安全性など解決すべき問題は少なくない。本研究の目的は短時間の間欠的高強度運動が心理状態の変化と対応する脳機能への影響を明らかにすることであった。2016年度は研究成果を論文発表するとともに、その後の研究を進めた。論文発表については、運動生理学の学術雑誌であるAdvances in Exercise and Sports Physiologyに、The Effect of High-intensity Interval Exercise on EEG Activity and Mood Stateと題した論文を掲載した。この論文では、短時間の間欠的全力ペダリング運動(Pedaling Exercise: PE)前後において、気分を評価する心理テストと脳波を測定すると、PE後の気分の回復過程において、一過性に覚醒レベルが低下する可能性が報告された。その後の研究では、短時間の間欠的全力PE前後の皮質脊髄路興奮性に関して、PE前と、PE後に上肢と下肢から得られた運動誘発電位(Motor Evoked Potential:MEP)の振幅と不応期を調べた。その結果、MEP振幅は腕橈骨筋についてはPEの直後に増加し、外側広筋と大腿直筋ではPE直後と15分に減少した。MEPに続く筋電図休止期間は、外側広筋についてはPE直後に延長し、腕橈骨筋では変化しなかった。これらの結果から、短時間の間欠的全力PEは上肢と下肢の皮質脊髄路興奮性に異なる影響を与えることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究によって、間欠的高強度運動後の気分の回復過程において一過性に覚醒レベルの低下が起こるという結果を英文誌に論文発表することができた。一方で、間欠的高強度運動前後の上肢と下肢の皮質脊髄路興奮性の変化についても得られた結果の解析を進めた。また、間欠的高強度運動前後の注意機能の変化について事象関連電位のミスマッチ陰性電位を調べる目的で、視覚ミスマッチ陰性電位の基本的な性質に関する実験を実施し、学会発表を行い、関連分野の研究者からも一定の評価を得た。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は、これまでに得られた研究結果を論文にして発表するとともに、間欠的高強度運動が無意識的な視覚情報処理と関係する事象関連電位(視覚ミスマッチ陰性電位; vMMN)に及ぼす影響について研究を進める予定である。また、脳血流についても近赤外分光法を用いて測定を試みる予定である。vMMNについては、短時間の間欠的全力PE前後に視覚刺激を用いてvMMNを誘発する。vMMNの誘発に使われる視覚刺激として、コンピューターの画面上に標準刺激(standard;STD、80%、 1600回)、逸脱刺激(deviant; DV、10%、200回)と反応刺激(target; TG、10%、 200回)を1秒に1回ランダムに提示する。TGに対しては素早くボタン押しを行う。1セットを400回として5セット行わせ、視覚刺激の提示中、被験者には落語を聞かせ、セット間に落語内容について質問する。 脳波は、国際10-20法に従って頭皮上12か所から記録する。刺激前100msを基準として、刺激後800msまでのデータを加算平均して事象関連電位(event related brain potential; ERP)を得る。そして、先行研究を参考に、3種類の刺激後約100~300msに表れるP1、N1、P2を、TGに対しては刺激後200~500msに表れるN2、P3を解析の対象とする。また、DVに対するERPからSTDに対するERPを減じて、vMMNを導出する。vMMNについては、先行研究を参考に、刺激後150~300msの陰性電位を解析の対象とする。TGに対するボタン押しについて反応時間を測定する。これらの測定により、これまであまり明らかにされてこなかった、全身性の高強度運動が無意識的な視覚情報処理過程に及ぼす影響が、詳細に明らかにされると考えられる。
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次年度使用額が生じた理由 |
協同研究者の支出が予定より少なかったこと、また、人件費と謝金としての支出が少なかったことなどが上げられる。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度は、研究内容についての国内外での動向を調査するとともに、発表や情報収集を行うための旅費使用、および測定や解析を進めるための消耗品、謝金使用を予定している。特に人件費と謝金使用は最終年度として研究を総括するためにより重要となると思われる。
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