副腎白質ジストロフィー (X-ALD) は、ABCトランスポーターの一つであるATP-binding cassette protein subfamily D1 (ABCD1) の機能異常を原因とする、脱髄を含む進行性の神経症状と副腎機能の障害が生じるX連鎖劣性の遺伝子疾患である。主に炭素数24以上の極長鎖脂肪酸は、ペルオキシソームにおいてβ酸化によって分解されるが、細胞質からペルオキシソーム内に極長鎖脂肪酸を取り込む役割をABCD1は担う。従って、X-ALD患者では、細胞内外で極長鎖脂肪酸が蓄積する。しかしながら、極長鎖脂肪酸は遊離脂肪酸ではなく、主に、脂肪酸補酵素A (CoA) として、あるいは、リン脂質をはじめとする様々な脂質分子の一部にとりこまれた状態で存在する。我々は脂肪酸CoAを測定する液体クロマトグラフィー・質量分析法を開発し、極長鎖脂肪酸CoAの代謝に影響を及ぼす薬剤を之までに見出した。本最終年度では、脂肪酸の同位体標識体を用いて、ABCD1の機能異常によって、脂肪酸代謝がどのように変化するかを、経時的に測定した。その結果、脂肪酸分子種別の時間変動がそもそも異なること、およびそれぞれの脂肪酸別に時間変動に及ぼすABCD1の影響が、各脂肪酸分子種別に異なることを見出した。
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