研究課題/領域番号 |
15K01693
|
研究機関 | 中部大学 |
研究代表者 |
青山 友佳 中部大学, 臨床検査技術教育・実習センター, 助教 (40460498)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 先天代謝異常症 / ケトン体代謝 / T2欠損症 / ACAT1遺伝子 / スプライシング / Minigene splicing 実験 / HSD10病 |
研究実績の概要 |
T2欠損症が疑われた症例の遺伝子解析は順調進めているが、HSD10病は現在のところ認めていない。平成28年度までの解析から、インド、リビア、ベトナムのT2欠損症について報告した(JIMD Reports 2016, The Egyptian Journal of Medical Human Genetics 2017, J Inherit Metab Dis 2017)。このなかで、インドの1症例にてスプライシングアクセプター部位のポリピリミジン領域に位置するc.121-13T>Aのホモ接合性変異がエクソン3のスキップを引き起こすことをminigene splicing実験により明らかにしてきた。このような位置にある変異がエクソンのスキップを引き起こすかを予測するために、いくつかのツールが開発されており変異の同定に用いられていることから、患者のc.121-13T>A変異およびc.121-13T>C、T>G変異について前年度のminigene splicing実験結果をふまえin silico toolにてスプライシング予測解析を試みた。この結果では、in silico tool でのc.121-13T>A、T>C、T>G変異のスプライシング予測は、minigene splicing実験の結果と一致しなかっことから、in silico toolの解析精度はまだ低く、スプライスアクセプター部位のポリピリミジン領域の変異は見逃されやすいため、診断にはminigene splicing実験を用いた変異の解析が有用であると考えられた。本症例の変異は、T2欠損症で報告のない新規変異であり、本研究結果は、T2欠損症を引き起こす遺伝子変異というだけでなく、スプライシングアクセプター部位のポリピリミジン領域に存在する変異の新たな知見であると考えられた(Mol Med Rep 2017)。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究期間内では、T2欠損症が疑われた症例への遺伝子解析およびMLPA解析等を行い、これら症例の遺伝子解析は順調に進んでいるがHSD10病を疑う症例は無く同定には至っていない。このなかでT2欠損症の1症例で明らかにしたc.121-13T>Aのホモ接合性変異はスプライシングアクセプター部位のポリピリミジン領域に存在しており、スプライシングに影響することが考えられたことから患者変異c.121-13T>Aと、さらにc.121-13T>C、T>G変異についてin silico toolを用いたスプライシング予測の解析を試みた。この解析には古くから用いられているShapiro and Senapathy scoreと、スプライシングの予測ツールとして広く用いられているAnalyzer Splice Tool、Human Splicing Finderにて解析を行ったところ、これら変異のin silico toolを用いたスプライシングの予測は必ずしもminigene splicing実験の結果とは一致しなかった。今回の解析結果からはin silico toolの解析精度はまだ低く、本疾患が持つようなスプライスアクセプター部位のポリピリミジン領域の変異は見逃されやすいことが明らかになった。平成28年度は、昨年度の実験の再現性およびこれら変異のスプライシング予測の解析を試み、スプライシングを引き起こす遺伝子変異の情報収集を行った。これら新たな知見を論文化することを最優先として研究を進めたため、計画していた内容に遅れが生じている。
|
今後の研究の推進方策 |
今後も継続して患者の遺伝子解析を進め、遺伝子変異と症状との関連性についての確認に取り組む。昨年度に引き続き、タンデムマス、臨床症状や生化学データにてT2欠損症が疑われる新たな症例の遺伝子解析を行う。詳細な解析が必要な症例についてはMLPA解析、long range PCR、cDNA解析、minigene splicing実験等を行いその変異を明らかにする。また、T2欠損症およびHSD10病において、これまで蓄積した遺伝子変異の情報を加え、変異や症状との関連性、民族でのコモンな変異についてまとめる。
|
次年度使用額が生じた理由 |
昨年度の実験の再現性とc.121-13T>AとT>C、T>G変異のスプライシング予測の解析に時間を要し、得られた結果の論文化を最優先したため、本来計画していた消耗品購入を繰越した。
|
次年度使用額の使用計画 |
平成29年度の研究費については、生化学検査や遺伝子解析に必要な実験消耗品や試薬類を中心に使用する。遺伝子解析の結果から、MLPA解析やminigene splicing実験等の詳細な解析が必要となるため、解析のための試薬や細胞培養等に必要な物品に使用する。
|