研究課題
申請者はこれまで、先天性ケトン体代謝異常症のなかでもT2欠損症について病態解析の研究を進めてきた。そのなかで、T2欠損症を疑いACAT1遺伝子の解析で変異が確認できなかった日本の症例にて、HSD10病を疑いHSD17B10遺伝子の解析にて日本人で初めてのHSD10病を明らかにしてきた。実際にこれまで、国内外にてT2欠損症を疑われた症例で、明らかに重篤な発作が起きているにも関わらず変異が同定されない症例が存在している。本研究では、このような症例のなかに隠れているHSD10病を明らかにし、そして遺伝子解析および病態の解明を行い、その情報を集約し症状の予測に役立てることを目指している。これまでの解析では、T2欠損症を疑われた症例にて、インドの1症例にてスプライシングアクセプター部位のポリピリミジン領域に位置するc.121-13T>Aのホモ接合性変異がエクソン3のスキップを引き起こすことをminigene splicing実験により明らかにした。さらに続けて、今年度は、T2欠損症を疑われる9症例の解析を進めてきた。これら症例にてT2欠損症の診断に必要なT2およびSCOTの酵素活性は正常であり、遺伝子解析でも変異が同定されない症例のなかでHSD10病の同定にはつながっていない。このように、T2欠損症、HSD10病どちらの遺伝子変異も同定されないような症例にて、実際にケトン体代謝がどのように動いているのかは分かっていない。これらの症例について、今後、実際のケトン体代謝を明らかにする手法の確立が重要であると考えられた。
3: やや遅れている
今年度も継続してT2欠損症を疑われる9症例にて、T2およびSCOTの酵素活性および遺伝子解析を進めてきた。遺伝子変異と症状との関連について解析に取り組んでいるが、HSD10病の同定には至っておらず、初めに予想していた症例数は得られていない。解析のなかで、実際にT2欠損症を疑われても、酵素活性と遺伝子変異は正常で、明らかに重篤な発作が起きているにも関わらず同定されない症例について、ケトン体代謝を確認する解析法の確立が必要となった。このケトン体代謝の解析には安定細胞株が必要であり、その作製に時間を費やしたため実験が遅れている。
実際にT2欠損症を疑われても、酵素活性と遺伝子変異は正常で、明らかに重篤な発作が起きているにも関わらず同定されない症例が存在していることを述べた。このような症例を明らかにするには、ケトン体代謝がどのように動いているかを知る解析法を確立する必要がある。また、これまでに解析を行った過去の症例のなかで、病態の経過について調査する必要も考えられる。
当初の計画のとおりT2欠損症からHSD10病の探索を進めてきた。しかし、明らかに重篤な発作が起きているにも関わらずT2欠損症でもなくHSD10病とも診断されない症例が存在した。このような症例では3-ヒドロキシ酪酸をターゲットに実際のケトン体代謝を確認する解析法の確立が必要となる。この解析のために安定細胞株の作製が必要となったが、細胞の調整がうまく進まず研究の遅れが生じた。消耗品は次年度へ繰り越し継続して実験を進める。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 3件)
Journal of Inherited Metabolic Disease
巻: 40 ページ: 845-852
10.1007/s10545-017-0065-z