嚢胞性線維症(CF; cystic fibrosis)は、Cystic fibrosis transmembrane conductance regulator (CFTR)遺伝子の変異を起因とする疾患で、患者の多くは膵外分泌不全を呈する。日本を含むアジア人種では非常に稀な疾患で、食事療法は十分に確立されていなかった。 本研究ではCF患者22名の栄養状態を評価した。膵外分泌不全を呈する15名の内10名(67%)がCFTR遺伝子変異を複合ヘテロ接合体で、4名(27%)がヘテロ接合体で持っていた(1名未解析)。一方、膵外分泌不全を持たない7名については、2名(29%)が複合ヘテロ接合体変異、2名(29%)がヘテロ接合体変異、3名(43%)が変異なしで、遺伝子変異と疾患に関連が確認された。 CF患者の約8割は低栄養であった。アルブミン値およびヘモグロビン値はBMIと有意な正の相関(p<0.05)を示し、特にBMI16未満(小児では10パーセンタイル)未満の者で顕著に低値であった。膵外分泌不全を呈さない患者(10歳3ヶ月、女児)でも、呼吸器症状が重度の症例では低栄養が見られた。この症例の基礎代謝は1094kcalであったが、ストレス係数分を219kcal~328kcalとした食事量を提案した。膵外分泌不全を呈する患者の栄養管理として、膵消化酵素補充剤の適切な服用と、エネルギーおよび脂溶性ビタミンの付加(1.3~1.5倍)を提案した。 今年度は更に欧米におけるCF患者の栄養指針を参考に、日本のCF患者の栄養アセスメント法および栄養ケア法を確立し、嚢胞性線維症情報交換会(平成29年 9月2日、名古屋)」にて内容を審議した。これらの成果を “嚢胞性線維症の診療の手引き[改訂2版]”「嚢胞性線維症患者の栄養ケア」にまとめ刊行し、CF患者の主治医および主な医療機関に配布した。
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