研究課題/領域番号 |
15K01698
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研究機関 | 西九州大学 |
研究代表者 |
田平 隆行 西九州大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (50337432)
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研究分担者 |
田山 淳 長崎大学, 教育学部, 准教授 (10468324)
太田 保之 西九州大学, 公私立大学の部局等, 教授 (50108304)
上城 憲司 西九州大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (90454941)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 注意バイアス修正 / 慢性腰痛 / 事象関連電位 |
研究実績の概要 |
注意バイアス修正は,刺激の感情価等の性質によって生じる注意の偏りを修正するプログラムであり,痛みの傾向をネガティブに捉える破局的思考の傾向が強い慢性疼痛患者においても効果が期待できる.今年度は,慢性腰痛を有する高齢者を対象に注意バイアス修正時の事象関連電位と疼痛や心理指標との関係を検討した.対象は,6カ月以上疼痛を有する地域在住の慢性腰痛高齢者10名(女性10名,平均年齢75.4±2.6歳)であった.ABM課題はdot-probe taskとし,刺激材料はJAFEEを参考に感情価が同定されている表情画像を用いた.脅威刺激(怒り・恐怖等)と中性刺激(無表情)が画面上下に500ms間対に呈示される.その後,中性刺激呈示位置にEが表示され,被験者は中性刺激方向に対応したボタンを押す.事象関連電位は,N1とP2成分を同定して潜時と振幅を算出した.腰痛とそれに関連する心理指標として腰痛症患者機能評価質問表(JLEQ),日本語版恐怖回避思考質問票(FABQ),Keele STarT Back,苦痛を感じて日常生活に支障をきたす身体症状を調べるThe Somatic Symptom Scale(SSS-8),日本語版Pain Catastrophizing Scale(PCS),ベック抑うつ評価尺度(BDI-Ⅱ)を用いた.その結果,反応時間は,FABQ,Keele STarT Back,SSS-8と正の相関を示す傾向であった.CzのN1振幅は,Keele STarT Back合計及び5-9領域得点双方にて有意な正の相関を示した.ABMの反応時間の遅延は陰性情動を惹起させる脅威刺激への注意バイアスにより判断に時間を要していることを意味しており,恐怖回避思考や疼痛への不安などの心理社会的要因が高い慢性疼痛患者ほどバイアスを持ちやすいことが示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
27年度の研究計画では,注意バイアス修正の刺激呈示および事象関連位記録システムを構築し,高齢慢性疼痛患者をリクルートすることであった.今年度,注意バイアス修正で利用する脅威刺激と中性刺激のセットおよびそのシーケンスであるドット・プローブ課題を作成した.研究分担者の企画した課題をモデル的に健康成人でプレ実験した後,高齢慢性疼痛患者10名に対して注意バイアス修正時の事象関連電位と疼痛や心理指標との関係を検討した.リクルート人数が若干少なかったが,実験そのものはトラブルもなく,データ収集ができている.
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今後の研究の推進方策 |
まず,慢性腰痛を有する高齢者の被験者数を増加し,健康高齢者に対しても27年度と同様の実験を実施する.また,数例の慢性腰痛を有する高齢者に対しABMマニュアル(Bar-Haim, 2010)に倣い8週間(2回/週,1回約10分)のABMを実施する.介入前,介入後,フォローアップ期間(3ヶ月,6ヶ月,1年)の各時期で疼痛・心理・生理(事象関連電位)・生活習慣を評価する.
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次年度使用額が生じた理由 |
注意バイアス修正刺激提示用パソコンをプレ実験のため既存のPCで代用していた.しかし,刺激呈示速度の精度が十分でない可能性があるため,専用の注意バイアス修正刺激提示用パソコンが必要である.
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次年度使用額の使用計画 |
専用の注意バイアス修正刺激提示用パソコンとトレーニングソフトを購入し,実験時間の短縮と精度向上を図る.
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