骨粗鬆症により発症する骨折は患者の生活の質を低下させ、高い死亡率につながる。近年の欧米における前向きコホート研究において、急性心筋梗塞や心不全患者では骨折の頻度が高いことが報告された。また、超高齢社会を迎えた欧米および日本で増加している慢性心不全および骨粗鬆症患者の治療に際して、心臓と骨の臓器連関に着眼した複合的・包括的な積極的予防法・治療法の確立が望まれている。 本研究の目的は、急性心筋梗塞後の慢性心不全動物モデルを用いて、心不全と併存する骨の構造的・機能的異常(心臓と骨の連関)を明らかにし、両者に対する運動療法の効果を明らかにすることである。 我々は遺伝子改変マウスモデルに同様の手技で急性心筋梗塞を作成した心機能障害マウスモデルを作成した。また 、心筋梗塞モデルに、トレッドミルによる運動療法を30分/日、5日/週行った。 遺伝子改変マウスにおいて、心筋梗塞作成後、心筋梗塞群においてSham手術群と比較し、大腿骨の骨密度が有意に低下することが観察 された。血中骨代謝マーカーの測定も行い、骨吸収マーカーは心筋梗塞群において有意に上昇を認めた。また骨密度と心臓超音波検査 で測定した心機能および骨吸収マーカーとの間に有意な相関関係を認め、骨密度・皮質骨厚と骨強度の間にも有意な相関関係を認めた 。トレッドミルによる運動療法の結果、心筋梗塞後の骨密度低下を有意に予防した。 骨の免疫組織学的検討を行い、骨密度の低下は分子Xと相関することも判明した。
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