研究課題/領域番号 |
15K01703
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
松本 淳子 千葉大学, 医学(系)研究科(研究院), 特任助教 (60722262)
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研究分担者 |
平野 好幸 千葉大学, 子どものこころの発達教育研究センター, 特任講師 (50386843)
徳山 宏丈 千葉大学, 医学(系)研究科(研究院), 特任助教 (90385039)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 高度肥満 / 肥満外科治療 / 認知機能 / 脳機能 / 脳形態 |
研究実績の概要 |
外科治療を受けた高度肥満症患者の認知機能(記憶、自己制御、意思決定能力、認知柔軟性など)が術後どのように変化するかを調べるため、神経心理検査およびMRIなどの客観的評価を行う。すなわち、外科治療による減量が彼らの認知機能および報酬系脳活動の改善に影響を与えるのか否か、また同時に、集積されたデータによってそのメカニズムを解明することを目的として研究をスタートした。本研究のデザインは、外科治療群(実験群)と外科治療未実施群(統制群)それぞれ20名ずつを対象にリクルートし、抑うつや不安の程度を評価する質問紙、神経心理検査、そしてMRI検査を、①ベースライン、②6ヵ月後、③ベースラインから18ヵ月後の各3時点で行うこととした。 平成27年度には、まず研究開始にあたり研究分担者との入念な打ち合わせと確認を行い、次に関係諸機関への協力呼びかけおよび研究体制の強化を図った。それを踏まえたうえで、実際に外科治療群2名(①、②終了)と未実施群3名(①のみ終了)をリクルートし、質問紙評価、神経心理検査、そしてMRIによる脳画像撮影を行った。 肥満外科治療によって長期的な体重減少はもとより、糖尿病や睡眠時無呼吸などの合併疾患の臨床的治癒や改善といった効果がもたらされているが、それだけにととまらず、高度肥満者の自尊感情やQOL、認知機能(注意・記憶・セットシフティングなど)の改善も見込まれることが欧米で報告されている。しかしながら、わが国において肥満外科治療によるその改善効果の報告はいまだない。加えて、認知機能と報酬系脳活動および脳形態の関連性および介入前後とフォローアップ時の3時点で評価するのは本邦初となることから、本研究は、この分野での知見を蓄積していくうえでまさに先駆けとなり、そして今後の肥満治療の発展に寄与できるものと考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
1. 外科手術適用者を決定する際、肥満症チームによる話し合いの中で、対象者が手術適合基準に合致するかどうか慎重に検討しているため、結果、症例数が増えなかった。 2. 仮にリクルートできたとしても、心臓ペースメーカーを装着している、あるいは閉所恐怖などからMRI検査ができない状況が数例あった。 3. 統制群のリクルートについては、肥満症患者特有の状況(過体重または過体重による息苦しさなど)を鑑み、長時間同じ姿勢を強いられるMRI検査が困難と判断し、協力要請を断念せざるを得ないケースもあった。
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今後の研究の推進方策 |
1. 実験群および統制群のリクルートを精力的に行い、順次データを取っていく。しかしながら、状況如何ではその後の研究計画の変更・修正を余儀なくされることも考えられる。その際は、研究分担者と密に話し合いを持ち、柔軟かつ慎重に対応しつつ、その場合、対象者数を見ながら、まずはベースラインと介入6ヵ月後の2時点でのデータ集積を念頭に置いて進めたい。 2. 当初の計画では、認知機能検査とMRIをセットで実施する予定であったが、肥満症患者特有の状況を考えると、1つのセットにこだわらずもっと柔軟に対応する必要があると考える。そのため、これらの検査を別々に実施することで有効なデータを集めていくという方向性を検討している。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究対象者のリクルートが思うように進まなかった(肥満外科手術の適用者が少なかった)ため、その謝金支出が減額したこと、また予定していた物品購入等については、他部署からの協力支援で当該物品が借用できたり、既存のツールを使用したりするなどして、結果的に捻出を押さえられたことなどが、次年度使用額が生じた理由として挙げられる。
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次年度使用額の使用計画 |
研究対象者を精力的にリクルートしその謝金に充てたり、データ解析のためのソフトを購入したり、また国際学会への参加・発表したりなどのために使用したいと計画している。
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