本研究は、通所型介護予防教室に参加する地域高齢者を対象として、軽度認知障害(MCI)とロコモティブシンドローム(ロコモ)・転倒リスクを同時に改善できる有効なエクササイズや評価方法の開発及びその予防効果の検証を目的とした。29年度は研究課題1で新規に開発された二つのテスト(①10m選択歩行+音反応、②番号ステップテスト)の有効性を検証した。テスト①について、課題遂行時間、応答失敗回数を評価変数として、MoCA得点と易転倒性との関係を検証した。課題遂行時間と応答失敗回数ともMoCA得点、易転倒性と有意な中程度以上の相関であった。ただし、その関係の程度は音反応を伴わない10m選択歩行時間と同程度であった。課題遂行時間と応答失敗回数のT得点の和の合成変数とMoCA得点との相関は高かったことから、課題遂行と応答失敗を踏まえた評価が有効であると推測された。一方、テスト②について、4つの課題(課題1:1から12番を順番に踏む、課題2:偶数のパネル6枚を踏む、課題3:4つの番号を覚えて順に踏む、課題4:3つの番号を覚えて逆順に踏む)を設定し、各課題遂行時間と失敗回数を計測した。MoCA得点に基づくMCI群と健常群を目的変数、番号ステップテスト変数(成就時間と失敗回数)を説明変数としてロジスティック回帰分析とROC分析を行った。いずれの課題においてもAUCは0.70以上の中程度の予測力を示した。また、遂行時間のみを説明変数としてもAUCは有意な差は認められなかった。以上より、本研究で開発したテストはMCIおよび転倒リスクを評価する妥当なテストであることが示唆された。
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