研究課題
糖尿病は、血中グルコース濃度の上昇状態が長期継続する病気である。糖尿病が進行し、網膜症や腎症などの血管障害に起因する合併症を併発すると、患者は長期療法を余儀なくされる。合併症になる可能性を事前に予見できれば、悪化の前に効果的な治療法を施すことが可能となり、健康と生活の質の向上に貢献できる。そこで本研究は、糖尿病合併症を予見する早期マーカー「プロレニン」に対する臨床現場即時検査法を開発することを目標とした。プロレニンとは、血圧調節酵素レニンの前駆体タンパク質で、プロセグメントが酵素の触媒残基を覆い不活性状態になっている。今年度は、検査法開発の鍵となる、プロレニンを認識する抗体を探索した。抗体として、プロセグメントの一部を抗原とした抗ペプチド抗体7種類、レニンの一部を抗原とした抗ペプチド抗体12種類および抗レニンポリクローナル抗体1種類に対しIgG粗画分をそれぞれ調製した。加えて、チャイニーズハムスター卵巣細胞で生産した組換え型プロレニンの精製標品を調製した。そして、各抗体とプロレニンとの結合を、ドットブロット、ウェスタンブロット、バイオレイヤー干渉法を用いて解析した。その結果、プロセグメントに結合するペプチド抗体(第1抗体)の候補を1種類、プロレニン上の別の箇所に結合する抗体(第2抗体)の候補を見いだした。これらの抗体は、プロレニンに対する臨床現場即時検査法の開発に貢献できる。一方、プロレニンは保存状態によってはプロセグメントが開いた構造を取って活性化することが知られている。今年度、プロレニンの構造状態をモニターするために必要なレニン基質(アンジオテンシノーゲン)を生産する方法を確立し、論文として公表した。
3: やや遅れている
プロレニンに結合する候補抗体を見いだした事は大きな進展であるが、当初予定していた抗体への蛍光標識あるいは金コロイド標識は未着手である。
今後は、上述の第1抗体および第2抗体を組み合わせ、プロレニンを特異的に検出する方法を確立する。最終目標は、特別な装置や技術を必要とせず、短時間で判定が可能なイムノクロマト法への実装である。短時間で抗体・プロレニン結合が検出できるよう、結合条件の最適化を行う。さらに、選んだ抗体への蛍光標識および金コロイド標識を実施し、臨床現場即時検査法のプロトタイプを作成する。
投稿していた論文がオープンアクセス誌(BMC Biotechnology)に受理された場合を想定して、予算を確保していたため。
2016年3月30日に論文が受理されたので、次年度使用額を使ってH28年度に支払い手続きを行う。
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BMC Biotechnology
巻: 7 ページ: 33
10.1186/s12896-016-0265-x
http://www.abios.gifu-u.ac.jp/nakagawa/