研究課題/領域番号 |
15K01707
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
海老原 章郎 岐阜大学, 応用生物科学部, 教授 (60415099)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | プロレニン / 糖尿病 / 臨床現場即時検査法 / 抗体 |
研究実績の概要 |
近年、世界の糖尿病人口は爆発的に増加し、2017年時点で4億2,500万人に達したと報告されている。自覚症状が乏しいまま糖尿病が進行し合併症を併発すると、患者は失明や透析を余儀なくされる。本研究の目標は、糖尿病合併症を予見する早期マーカー「プロレニン」に対する臨床現場即時検査法の開発である。 プロレニンは、血圧調節酵素レニンの前駆体タンパク質で、プロセグメントが酵素の触媒残基を覆い不活性状態になっている。検査法開発にはプロレニンを認識する少なくとも2種類の抗体が必要である。昨年度(平成28年度)は、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)にてプロレニンに対する抗体の結合性を解析し、プロセグメントに結合するペプチド抗体(第1抗体)の候補4種類、プロレニン上の別の箇所に結合する抗体(第2抗体)の候補2種類を得た。この結果について学会で発表した。今年度(平成29年度)は、これらの抗体群から選んだ2種類の抗体を組み合わせプロレニンを挟み込むサンドイッチELISAを構築した。その結果、プロセグメントに結合する抗体(精製済み)を2つ組み合わせた際に、適切な検量線を描くことができた。 我々は臨床現場即時検査法としてイムノクロマト法を採用し、今年度、トレーニングコースを受講した。その経験を踏まえ、今回見いだした上記の抗体を用いて、金コロイド標識を用いたイムノクロマト法(ハーフ・ストリップ方式)を検討した。その結果、検出感度1 μg/mLにてプロレニンを検出した。 一方、抗原となるプロレニンの活性化状態をモニターするために必要なレニン基質(アンジオテンシノーゲン)について、その立体構造を決定するために結晶化条件をスクリーニングを行い、結晶を取得した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度、臨床現場即時検査法(イムノクロマト法)の試作品を作ることができた点は大きな進展である。しかし、現時点で得られている検出感度では血中プロレニンを測定することは難しく、当初予定していたイムノクロマト法の実装にまでは至っていない。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、検出感度の向上のためのあらゆる取組みを行う。具体的には、プロレニンに抗体を作用させる順序を変える、抗体標識の方法を金コロイドから蛍光に変える、新たな検出器を開発する、情報学的に抗原性の高い領域を見いだし新たな抗体を設計・調製するなどである。
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次年度使用額が生じた理由 |
イムノクロマト法の実装に必要な抗体は、未精製抗体(抗血清)より精製済みの抗体の方が適切に機能するという実験的裏付けを得るまでに多くの時間を要した。そのため、抗体精製に必要な物品の購入や抗体の新規作成を想定した予算を確保しており、その予算額が次年度使用額となった。感度向上のための取組み並びに抗体精製、新規抗体の作成を行い、イムノクロマト法を実装する。
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