Growth arrest and DNA damage-inducible protein (GADD34)はDNA傷害性ストレスや小胞体ストレス、また、低酸素ストレスにおいても発現が誘導されることが示されている。本研究では、生体防御機構におけるGADD34の機能を解析することを目的としており、悪性腫瘍での腫瘍微小環境においても低酸素状態を示すことから、腫瘍形成におけるGADD34の機能解析を行った。肺癌細胞株(LLC)を低酸素誘導因子であるCoCl2存在下で培養した結果、GADD34の発現増加がみられ、低酸素ストレスにおいてGADD34の発現が誘導されることが確認された。shRNAによりGADD34遺伝子発現を抑制した肺癌細胞株(shGADD34-LLC)を作成し、マウスに皮下接種し、腫瘍増殖及び腫瘍局所における免疫系細胞について解析した。その結果、shGADAD34-LLC担癌マウスではshControl-LLC担癌マウスに比べ腫瘍増殖が優位に抑制されることが確認された。さらに、shGADD34-LLC担癌マウスでは、腫瘍局所及び脾臓において免疫抑制を誘導するGr1+CD11b+のmyeloid-derived suppressor cells (MDSCs)の割合が減少し、また、CD8+T細胞の割合が増加することが明らかとなった。さらに、CoCl2存在下で培養したshGADD34-LLCまたはshControl-LLCの培養上清をMDSCsに添加しVEGF、TGF-betaの発現を解析した結果、shGADD34-LLC培養上清の添加によりVEGF及びTGF-betaの発現が減少することが明らかとなった。これらの結果から、GADD34は腫瘍局所においてMDSCsを誘導することにより腫瘍増殖を促進することが示された。
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