ロコモティブシンドロームの客観的評価方法として、ロコモ度テスト(立ち上がりテスト、2ステップテスト)が一般的に用いられているが、それぞれどのような下肢筋力やバランス機能を反映しているのかについて大規模サンプルで詳細に検討した報告はみられない。そこで平成30年度は地域在住中高齢者におけるロコモ度テストと下肢筋力およびバランス能力との関連性について明らかにすることを目的とした。 対象は地域在住中高齢者934名(男性450名、年齢67±1 歳)とし、ロコモ度テスト(立ち上がりテスト・2ステップテスト)を測定した。下肢筋力として股関節屈曲・外転・伸展、膝関節伸展、足趾筋力、バランス能力として開眼片脚立位時間、開眼閉脚立位時重心動揺(総軌跡長、前後・左右偏差)を測定した。ロコモ度テストの結果から非ロコモ群とロコモ群の2群に分類し、群を従属変数、基本特性、筋力、バランス能力を独立変数とした多重ロジスティック回帰分析を行った。さらに、多重ロジスティック回帰分析により有意な因子として抽出された筋力・バランス項目について、ROC曲線を用いてロコモと判定されるカットオフ値を求めた。 多重ロジスティック回帰分析の結果、立ち上がりテストに関連する因子として年齢、身長、体重、片脚立位時間、股関節屈曲・外転筋力が抽出された。2ステップテストに関連する因子として年齢、体重、片脚立位時間、股関節屈曲・外転・伸展筋力が抽出された。ROC曲線より求めたカットオフ値は立ち上がりテストで片脚立位時間58.2秒、股屈曲筋力30.3Nm、股外転筋力71.5Nm、2ステップテストで片脚立位時間56.3秒、股屈曲筋力31.2Nm、股外転筋力66.1Nm、股伸展筋力60.5Nmであった。 本研究の結果、ロコモ度テストには下肢筋力・バランス能力の中でも特に股関節筋力や片脚立位能力が関連していることが示唆された。
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