研究実績の概要 |
階段昇降運動の急性的血糖降下作用に関する臨床的有用性(優位性)を、糖代謝障害者において自転車運動との比較において検証した。7名の2型糖尿病患者と7名の耐糖能異常者(年齢60.9±11.2歳)に対して、試験食(660Kcal)の摂取後90分から、自転車エルゴメータを用いた定常運動、あるいは階段昇降運動を、運動中の平均心拍数が同程度(約130拍/分)となるように運動強度を設定して、約8分間負荷した。自転車エルゴメータ運動は、アイソパワーエルゴメータを用いて50~65回転/分で実施し、階段昇降運動は1階分(18㎝×21段)の階段を下りて上ることを16回連続で反復した。その結果、食後90分から105分の間の急性的な血糖降下量は、階段昇降運動のほうが有意に大きくなった(階段昇降運動:4.0±0.7mmol/L, 自転車運動:2.7±0.9mmol/L, P<0.05)。また、どちらの運動も行わない場合の血糖降下量を差し引いた実質血糖降下量も、階段昇降運動のほうが有意に大きくなった(階段昇降運動:3.2±0.7mmol/L, 自転車運動:2.0±0.6mmol/L, P<0.01)。血中インスリン濃度には両群間に差はなかった。さらに、階段昇降運動では、酸素消費量が9%高かった一方で、呼吸交換比は有意に低く、また血中乳酸濃度の上昇も有意に小さかった。これらの結果は、同じ心拍数で運動した場合、階段昇降運動が自転車運動に比して、酸素消費量が高いにもかかわらず運動を楽に感じながら、より強力に食後血糖を降下させる作用を持つ可能性を示唆するものである。
|