研究課題
生活習慣病のリスクファクターとしてこれまでに肥満や高血圧症、糖尿病など指摘されているが、癌を含む全死亡に占める死亡リスクとしては喫煙が一番高い。これまでの研究により喫煙者は血中レベルのCRPやIL-6が高く、過去喫煙者においてもこれらが高い傾向にあり、炎症が遷延している可能性を示すとともに、喫煙による健康障害の性差について女性喫煙者では内臓脂肪面積が有意に大きくなっていることを初めて明らかにし報告してきた。本研究では喫煙と老化の関係に注目し、老化遺伝子であるKlothoに対する喫煙の影響についての検討を行い、喫煙による老化の促進や健康障害の分子メカニズムを明らかにすることをめざした。今年度は喫煙男性40名、非喫煙男性40名を対象とし、各種サイトカイン、Klotho関連分子である a-Klotho, FGF-19, FGF-21を測定し比較検討した。喫煙者では, FGF-21, a-Klotho, IL-6が有意に高く、FGF-21はアディポネクチンと負の相関を示し、a-KlothoはIL-6と正の相関を示した。喫煙者ではFGF-21が肝機能、コレステロールと相関を認め、喫煙者のFGF-21上昇は代謝異常促進を予見していると考えられた。また、a-KlothoとIL-6の相関関係は非喫煙者のみに認められ、IL-6上昇に対応したa-Klothoの抗炎症作用は喫煙ストレスにより減弱化されている可能性が示唆された。喫煙は、FGF-21やアディポネクチンを介して代謝性疾患のリスクとなるとともに、IL-6やa-Klothoを介して炎症の遷延化をきたし、老化・加齢性疾患のリスクとなることを明らかにした。
2: おおむね順調に進展している
本研究では喫煙と老化の関係に注目し、老化遺伝子であるKlothoに対する喫煙の影響についての検討を行い、喫煙による老化の促進や健康障害の分子メカニズムを明らかにすることをめざした。まず今年度は男性喫煙者を対象として研究を実施し、喫煙者において非喫煙者と比較して、老化関連因子であるa-Klothoと、代謝と関連するKlotho関連分子であるFGF-21が上昇しているという極めて興味深い結果を得ることができた。本結果は喫煙習慣により老化と関連する分子が変動してていることを明らかにした初めての報告であり、学会での優秀ポスター賞の受賞にもつながった。
今年度は男性喫煙者を対象として研究を進めてきたが、今後は当初計画に沿って女性喫煙者を対象とした解析を行い、喫煙による健康障害・老化メカニズムの性差について検討を加える予定である。また、過去喫煙者におけるa-Klotho, FGF-19, FGF-21の血中レベルの推移や炎症マーカーの検討を行うとともに、生活習慣の改善・悪化に伴う種々のパラメーターの変化を追跡する。
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