研究実績の概要 |
平成29年度は昨年との引き続き抽出リポ蛋白検討をすすめ、VLDL、LDLあるいはHDLなどの粒子組成と異なった生理活性を有していること、とくに補体(C3, C4など), アポ蛋白(apoB, apoA2, apoD, apoHなど)、paraoxonase 1 (PON-1)、serine protease inhibitorなどを含んでいることを取りまとめ論文作成し投稿中である。さらにアポB-48含有リポたんぱくであるカイロミクロンおよびカイロミクロンレムナントが増加する代表的な疾患である糖尿病症例において、近年中心的に使われているDPP4阻害薬sitagliptinの投与によりこれらがどのように改善するかを検討した。38名の2型糖尿病患者(男性20名、女性18名、平均65.7 ± 9.9才、HbA1c <8.4%)に承諾を得てsitagliptinを50 mgから開始、100mgまでの増加を許してHbA1cの低下 (<7.4%)を目指した。sitagliptinの投与により、 TG(161 ± 90 vs. 130 ± 66 mg/dl)およびnon-HDL-C (129 ± 29 vs. 116 ± 20 mg/dl)の低下が glucoseやHbA1cの低下とともに見られ、アポB-48 (7.8 ± 6.7 vs. 5.6 ± 4.0 μg/ml)、レムナントコレステロール(15.3 ± 9.5 vs. 12.0 ± 7.9 mg/dl)のいずれも抑制された。HPLCによる解析ではVLDLやLDL分画に含まれるレムナントの抑制も認められ論文報告した。今回の検討を通じて、カイロミクロンレムナントの知られていない特性や近年増加している糖尿病患者における動脈硬化惹起性を担うレムナントの現状評価や治療効果の評価においてもアポB-48測定の有用性が示された。
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