研究課題/領域番号 |
15K01716
|
研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
池田 康将 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部, 准教授 (60432754)
|
研究分担者 |
八木 秀介 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部, 助教 (00507650)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 鉄 / 骨格筋萎縮 / ユビキチンリガーゼ |
研究実績の概要 |
8週齢の雄性C57BL6/Jマウスに、腹腔内デキストラン鉄投与を連日行い、鉄過剰モデル(Fe群)を作成して、vehicle投与対照群と比較した。Fe群では、血清フェリチン値と骨格筋鉄量の増加を認め、生体内鉄量ならびに組織鉄量の増加が確認できた。骨格筋重量について、投与7日後にて腓腹筋、ヒラメ筋ならびに前脛骨筋の重量はFe群で減少しており、骨格筋線維断面積も同様に低値であった。鉄投与14日後では、骨格筋量減少と骨格筋線維断面積はさらなる低値を示した。骨格筋委縮に関わるユビキチンプロテアソーム経路について、ubiquitin ligaseE3遺伝子MAFbx/atrogin-1ならびにMuRF1(muscle ring finger-1)の遺伝子発現は、Fe群において3日目から増加し、7、14日目で有意な増加を認め、AktとFOXO3のリン酸化も3日目以降低下していた。骨格筋の酸化ストレスも、Fe群では骨格筋DHE染色によるスーパーオキシド産生の増加を認めた。in vitro解析では、鉄刺激によってin vivoの結果と同様に、MAFbx/atrogin-1ならびにMuRF1遺伝子発現増加、Akt-FOXO3経路リン酸化低下、筋線維横径縮小が認められ、siRNA FOXO3導入によって、これらの変化は抑制されたまた。抗酸化剤テンポール前処理によっても、鉄によるAkt-FOXO3-atrogenes変化と筋繊維委縮は抑制された。以上の結果から、骨格筋への過剰な鉄蓄積は、酸化ストレスを介したユビキチンプロテアソーム経路活性化により骨格筋委縮を引き起こすことが確認できた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
鉄過剰による骨格筋萎縮とそのメカニズムを解明し、学術誌に投稿、掲載予定となった。骨格筋特異的フェリチン欠損マウスを作成して、実際に骨格筋のみでフェリチンが欠損していることを遺伝子・タンパクレベルで確認できた。フェリチン過剰発現用プラスミドは完成したが、培養細胞への導入がうまくいかなかったため、再検討中である。またフェリチンsiRNAは導入できたものの、ノックダウンのみでの表現系は確認できなかった。
|
今後の研究の推進方策 |
骨格筋量維持には合成と分解のバランスが重要である。骨格筋分解における鉄の役割を明らかにできたため、本年度は鉄と骨格筋合成の関係について解析する。また骨格筋特異的フェリチン欠損マウスが完成したため、その表現型の解析を進める予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
参加予定学会の旅費が当初の予定より費用が少なく済んだ。
|
次年度使用額の使用計画 |
消耗品購入に使用予定。
|