研究実績の概要 |
昨年度に続けて、本年度は骨格筋再生について検討した。8週齢の雄性C57BL6/Jマウスに、腹腔内デキストラン鉄投与を行い、鉄過剰モデル(Fe群)を作成した。In vivo実験では、カルジオトキシン(CTX)筋傷害による骨格筋再生モデルを用いて、vehicle投与対照群と比較した。Fe群では、MyoD, Pax7といった筋衛星細胞マーカーが低下してした。CTX傷害後、myogenin, myosin heavy chainといった再生マーカーは増加するが、Fe群ではその増加は抑制され、組織学的にも骨格筋再生の抑制を認めた。骨格筋分化に関与しるERK1/2, p38の活性化もFe群で抑制されていた。In vitro実験における培養骨格筋細胞を用いた検討でも、Fe負荷によって筋分化マーカー、形態的にも分化は抑制され、ERK1/2, p38の活性化も抑制される同様の結果が得られた。Fe負荷によって酸化ストレスの増加が確認でき、上記の鉄による筋分化抑制の変化は、抗酸化薬テンポールの前処理によって改善を認めた。なおテンポールによって細胞内鉄量に変化は認めなかった。以上の結果から、骨格筋における鉄蓄積は、酸化ストレスを介して骨格筋再生を抑制することが確認でき、鉄は、骨格筋分解・再生バランスの恒常性維持に重要な役割を担っていることが示唆された。骨格筋特異的フェリチン欠損マウスを作成して、各種の骨格筋萎縮モデルを作成したものの、野生型の表現系と差が見られなかった。
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