研究課題/領域番号 |
15K01723
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研究機関 | 和歌山県立医科大学 |
研究代表者 |
佐々木 秀行 和歌山県立医科大学, 医学部, 教授 (80205856)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 高齢者の基準値 / 末梢神経機能障害 / 振動覚 / 糖尿病 / 高血圧 / 小径神経線維 / 大径神経線維 / 痛覚閾値 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は高齢者における末梢神経機能の基準値を設定し、末梢神経障害の実態と危険因子を解明し、フレイルのハイリスク者の抽出法を開発することである。 平成27年度に実施した住民健診では、振動感覚測定装置AU-02B(RION社)を用い第1趾の定量的振動覚域値(QVT)、神経伝導検査装置DPNチェックHDN-1000(NeuroMetrix社)を用いて腓腹神経の神経伝導速度(CV)および神経活動電位(AMP)を測定し、糖尿病が末梢神経障害の強力は危険因子であること、QVT、CV、AMPはすべて加齢により有意に悪化し、CVは身長ときわめて強い負の相関を認めることを見出した。更に、糖尿病と末梢神経障害の自・他覚症状のない対象において、分位点回帰法を用いてQVT、CV、AMPの基準値を計算する回帰式を<AMP基準値=15.65-0.095×年齢(年) -0.056×体重(kg)、CV基準値=94.9-0.15×年齢-0.23×身長(cm)QVT基準値=4.615 -0.39×年齢>を設定、また、非糖尿病者では、高血圧も末梢神経機能低下の危険因子であること、学会発表した。 平成28年の住民健診では、QVTに加えて足背部の定量的痛覚閾値(QPT)を携帯型末梢神経検査装置:PNS-7000 (日本光電社製)を使用して測定し、臨床的因子との関連性を検討した。この装置は小径神経線維である表皮内痛覚線維(Aδ線維)を選択的に刺激できる微小同心針電極を使用し微小な電流刺激を増減させ、チクリと感じる最小の刺激強度を測定する新しい検査である。解析中であるが①有意な加齢変化はないが70歳以降で上昇傾向を示すこと、②糖尿病で有意な上昇を示すこと、③大径神経線維の機能であるQVT、アキレス腱反射とは関連性を示さず、両足の痛みとのみ関連を示すことなど興味深い結果が得られており、更に検討を進める予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度は住民健診受診者において、振動覚(QVT)、神経伝導速度(CV)、神経活動電位(AMP)の高齢者における基準値を設定し、これらが有意な加齢変化を示し、神経障害の危険因子として耐糖能異常に加えて高血圧があることを見出した。 平成28年度はQVTと定量的痛覚閾値(QPT)を測定した。現在解析中である。これは小径痛覚線維の機能を調べる検査であるが、有意な加齢変化は示さないこと、QVTやアキレス腱反射とは関連しないこと、自覚症状ではしびれとは関連せず両側の足の痛みとのみ関連、糖尿病で有意に上昇することが示されている。加齢変化のないことよりフレイルとの関連性は強くないようである。 上記のようにほぼ計画通り進行している。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度の住民健診ではQVT検査を実施し、前々回の受診者との重複例を抽出し悪化例の背景因子を調べることにより、末梢神経機能の悪化因子を調べる。また、握力などとの関連性を調べることにより、フレイルのハイリスク患者抽出法を開発につなげたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度の学会出張費用を別途に支出したためである。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度には、論文作成(英文校正など)、学会発表、健診時の補助員の人件費がかさむことが予想され、そのために使用を予定している。
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