研究課題
本研究の目的は①高齢者末梢神経機能の基準値の設定、②多発神経障害(PN)の実態と関連因子の解明、③フレイルハイリスク者検出法の開発であった。2015年の健診時に、定量的振動覚域値(VT:振動感覚測定装置AU-02Bで測定)と腓腹神経の神経伝導速度および神経活動電位(CV,AMP: 神経伝導検査装置DPNチェックHDN-1000で測定)を検査して定量的末梢神経機能を調べた。そのデータをもとに、年代別の基準値を算出する回帰式を分位点回帰法にて決定した。米国人回帰式と日本人回帰式が若干異なることが判明し、日本人では日本人式を用いる方が糖尿病神経障害の診断精度が良くなること確認し、併せて英文で報告した。さらに、定量的末梢神経機能、自覚症状とアキレス腱反射で診断した臨床的PN有病率は既知の糖尿病でのみ上昇し、その関連因子は糖尿病と喫煙であること、神経伝導機能は耐糖能および血圧の悪化と平行して低下すること見出し英文で報告した。2016年の健診時には、小径感覚神経線維(A-δ)機能を反映する定量的痛覚閾値(PT:携帯型末梢神経検査装置PNS-7000で測定)を調べ、基準値を策定した。また、PTは痛みと関連し、早期の糖尿病においても上昇すること、大径感覚神経機能を反映するVTとは対照的に、加齢変化が少なく腱反射やしびれ感と関連しないことより、PTが小径神経線維機能の指標となることを発表した。2018年は過去のデータより、フレイル指標である筋力(握力、股関節外転・内転筋力)と生活習慣病および末梢神経機能の関連を男女別に調べた。多変量解析で男性ではVT・Amp、女性ではVTが筋力低下の関連因子であり、末梢神経障害(特に振動覚低下)診断がフレイルハイリスク者の検出に有用な可能性を発表する予定である。当初の目的の回答は不十分ながら得られており、今後さらに論文化を進めたい。
すべて 2019 2018
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (12件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件)
J Diabetes Investig
巻: 10 ページ: in press
doi.org/10.1111/jdi.13058
巻: 9 ページ: 1173 - 1181
doi:10.1111/jdi.12818
日本体質医学会雑誌
巻: 80 ページ: 91 - 98