研究課題
当院予防医療センターにて運動器ドックをうけた男女200名(うち男性95名、平均年齢66±12歳、平均BMI 23±4)を対象として、臍部レベルCT画像を用いて、内臓脂肪面積の計測に加えて大腰筋・脊柱起立筋・前腹部筋(腹直筋・腹斜筋)の各断面積の測定を行った。そして各腹部筋肉断面積と膝単純レントゲン、腰椎レントゲン・腰椎MRI、DXA(骨密度)検査などで評価した運動器の状態や、各血液代謝指標ならびにDXAで評価した筋肉量・脂肪量との関連を検討した。結果、各腹部筋肉断面積はいずれも年齢と強い負の相関を認める一方で、BMIとの関連は筋肉間で強弱がみられた。運動器との関連では、女性では骨密度と、男性では四肢筋肉量(筋肉指数)とより強い相関を認めた。さらに興味深いことにレントゲンで評価した膝関節変形の程度は、年齢やBMI,四肢筋肉量とは独立して脊柱起立筋断面積の低下と関連していた。各種血液代謝指標は、内臓脂肪面積と強い関連を認める一方で、腹部筋肉断面積と血液代謝指標、内臓脂肪断面積や体脂肪率との関連は明らかでなかった。今回の検討により、内臓脂肪面積に加えて腹部筋肉断面積を同時に評価することで、骨量や筋肉量はもちろん、膝関節変形のリスク評価も行える可能性が示唆された。その一方で、メタボリックシンドロームの病態評価という点では、内臓脂肪面積の評価が重要であることが改めて確認された。
2: おおむね順調に進展している
質問紙を用いた身体活動量や不活動量、運動強度の調査は、現状の質問紙では、定量化が難しく、またうまく答えられない症例が少なくないことが判明した。そのため、腹部筋肉断面積と運動習慣や歩行速度の間に関連がみられることは示唆されたが、筋肉間の差異や性差については明らかでなかった。
身体活動量や、不活動時間、運動強度をより定量的に評価するうえで、本年度より問診票の改訂を行い、より詳細に筋肉断面積や代謝指標との関連を明らかにできるようにする予定である。また、より多数例での検討から運動器と各腹部筋肉断面積との関連について明らかにする予定である。
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日本臨床スポーツ医学会誌
巻: 23 ページ: 392-394