研究課題/領域番号 |
15K01726
|
研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
東 宏一郎 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 講師 (60317104)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 腹部筋肉断面積 / 脊柱起立筋 / 運動 / ロコモティブシンドローム |
研究実績の概要 |
当院予防医療センターにて運動器ドックを受診者280名(男性146名、平均年齢64±13歳、平均BMI23±4)を対象に、引き続き臍部レベルのCT画像を用いて、大腰筋・脊柱起立筋・前腹部筋(腹直筋・腹斜筋)の各断面積およびCT値の測定を行った。本年は特に前年度に明らかとなった運動器と腹部筋肉の関連に着目した。すなわち、ロコモティブシンドローム(ロコモ)の主要要因である変形性膝関節症および腰椎症、骨粗しょう症についてレントゲンおよびDXA検査にて評価し、これらロコモ要因と腹部筋肉の関連を評価した。 結果、男女ともに2/3の症例で一つ以上ロコモ要因(+)で、ロコモ要因(―)に比して年齢が有意に高かった。男性の場合、年齢とともに腰椎変形が有意に増え、一方女性では、骨密度低下・骨粗しょう症の増加が有意で、両者ともに男女間で交互作用を認めた。 体重やBMI、体脂肪量、全身および四肢筋肉量との関連は明らかでなかった一方で、腹部筋肉については、膝関節変形と同様に特に脊柱起立筋との関連が男女ともに有意であった。すなわち、ロコモ要因(+)群では、(-)群に比して脊柱起立筋断面積およびCT値が有意に小さく(低く)、脊柱起立筋の量および質の低下と運動器疾患との関連が示唆された。 腹部筋肉間の意義の違いは明確でないが、日常生活をはじめとした姿勢保持の際により重要と考えられる脊柱起立筋で最も違いがみられたことは、本筋肉のマーカ―としての有用性を意味しているかもしれず、食事・運動習慣との関連はもちろん、代謝指標との関連を検討することでロコモティブシンドロームとメタボリックシンドロームの接点についてのさらなる理解につながるかもしれないと考えている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度より例数を増やした検討により、特に運動器疾患との関連における筋肉間の差異や性差について明らかにすることができた。その一方で、現在の症例では、糖尿病症例などが少ないなどの理由もあり、代謝性疾患との関連はその有無を含めて明らかとなっておらず、糖尿病症例を含めたより幅広い症例での検討が必要と考えられる
|
今後の研究の推進方策 |
昨年度より質問紙表の改訂を行ったこともあり、昨年度以降の健診受診者においてHbA1c7%を超える糖尿病症例と、年齢・性別・BMIのマッチした非糖尿病者を対照として、腹部筋肉の解析をさらに行う。そして活動量・不活動時間との関連を含めて、ロコモティブシンドロームの指標であるだけでなく、メタボリックシンドロームの指標ともなるか、特に内臓脂肪との対比を含めて検討を行い、腹部筋肉評価の意義を明らかにする。
|
次年度使用額が生じた理由 |
昨年度からの質問紙表の改訂に伴い、本年度により多くの症例の質問紙および、腹部筋肉画像の解析を予定することとしたため
|
次年度使用額の使用計画 |
上記解析および、データ整理・論文作成・英文校正・投稿を行っていく予定で、それぞれに必要な経費として使用する
|