研究実績の概要 |
当院予防医療センター基本ドックを受診した中高齢男女で、DM者と、年齢・性別・BMIのマッチした非DM者を対象に臍部レベルCT画像を用いて内臓脂肪面積(VAT)および大腰筋・脊柱起立筋・腹直筋・腹斜筋の断面積ならびにCT値の測定を、Th12レベルCT画像を用いて肝臓(L)・脾臓(S)CT値の測定ならびに脂肪肝の指標としてのL/S比算出を行い、血液糖代謝指標との関連を検討した。 結果、まず女性での検討でDM女性(N=57,70±8歳, BMI 25±5, 腹囲90±13cm, FBS153±42mg/dl, A1c7.8±1.4%,)では、非DM女性(N=59, 69±9歳, BMI 25±3, 腹囲90±8cm, FBS99±8mg/dl, A1c5.5±0.2%)に比し、L/S比が低値(脂肪肝が強く)かつVATが高値であった(L/S比: 1.09±0.21 vs 1.17±0.18, p<0.05, VAT: 130±65 vs 108±42 cm2, p<0.05)。一方で、各腹部体幹筋断面積およびCT値は両群で差を認めなかった。むしろ大腰筋断面積は、L/S比と負の相関、インスリン抵抗性指標であるHOMA-IRと正の相関があり、前年度までに明らかにした運動器疾患(変形性膝関節症および腰椎症、骨粗鬆症)と腹部筋肉とくに脊柱起立筋断面積およびCT値(筋肉の質)との間に関連を認めたこととは対照的であった。 以上より、代謝性疾患、メタボリックシンドローム評価には内臓脂肪面積評価が、一方で、ロコモティシンドローム評価には、全身や四肢筋肉量評価よりもむしろ内臓脂肪面積評価と同一断面画像で評価可能な筋肉(特に脊柱起立筋)断面積およびCT値が有用であることが示唆され、超高齢社会を迎えてメタボとロコモの同時評価・スクリーニングを行う上での有用な知見を得られたものと考えている。
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