研究課題
これまで、不活動による骨格筋の「量」と「質」の両者の低下を予防することが、健康寿命の延伸に重要であることが示されてきているが、これらの研究はそれぞれ個別に行われることが多く、共通したメカニズムの検討はほとんどなされていない。そこで本研究では、不活動により活性化するフォスファチジン酸脱リン酸化酵素(Lipin1)が、不活動による骨格筋の「量」と「質」低下における重要な鍵分子として働くと仮定し、その役割を、ヒトにおける実験系とin vitro、in vivoにおける機能解析により明らかにするため検討を行った。その結果、マウス、マウス由来の細胞を用いた検討で、不活動による骨格筋の「質」(インスリン抵抗性)、「量」低下に関して、Lipin1が骨格筋インスリン感受性低下に重要な役割を果たすとされるdiacylglycerol(DAG)蓄積、あるいはInsulin receptor substrate 1(IRS1)発現量の調節を介して重要な役割を果たしている可能性があることが明らかとなった。また、ヒトにおける検討でも不活動がLipin1発現量を調節し、DAG蓄積をもたらすことが明らかとなり、ヒトにおいても身体活動量低下によるインスリン感受性低下にLipin1が重要な役割を果たす可能性が示唆されるとともに、日本人をはじめとする非肥満者のインスリン感受性低下メカニズムの一因となり得る可能性があることが明らかとなった。今後は、現在作成中のトランスジェニックマウスの解析などを通して不活動による骨格筋細胞内脂質蓄積を介したインスリン抵抗性惹起のメカニズムをさらに詳細に解明するともに、各分子を指標とした運動様式や食事介入、薬物介入の可能性などについて様々な応用が検討可能であると考えられる。
2: おおむね順調に進展している
ヒトでの検討、遺伝子導入での検討を順調に進めている。今後更なる詳細な検討のため、トランスジェニックマウスを作成しており、検討を進める予定である。
今後も共同研究者、連携研究者と緊密に連絡をとり研究を進めていく
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10.1152/ajpendo.00220.2015.
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