フレイルは、身体機能や認知機能、社会的要因が大きく関与し発生するが、健常な状態に戻る可逆性があり予防や改善を行うことができる。その要因の特定は重要であり、フレイルの前段階であるプレフレイルに陥る要因について着目し検討した。ベースラインにおいてロバストであった248名(男性115名、女性133名)を対象にした。このうち1年後にロバストを維持した者をロバスト群(男性89名、女性105名)、プレフレイルに移行したものをプレフレイル群(男性26名、女性28名)とし、ベースラインにおける2群間比較を行った。項目には、身体計測、運動機能、口腔機能、栄養状態、精神状態、基本チェックリストを用いた。栄養状態ではMNAは女性のみプレフレイル群が有意に低値を示した(p=0.045)。精神状態では、男性で人間関係評価(p=0.003)、幸福評価(p=0.017) 、主観的QOLの総合評価(p=0.040)においてプレフレイル群が有意に低値を示し、GDS(p=0.034)は有意に高値を示した。女性は、健康評価(p=0.004)、気分評価(p=0.021)、人間関係評価(p=0.002)、幸福評価(p=0.047)、主観的QOLの総合評価(p=0.008)においてプレフレイル群が有意に低値を示し、GDS(p=0.024)は有意に高値を示した。基本的チェックリストでは、女性は、合計点(p=0.034)がプレフレイル群で有意に高値を示した。プレフレイルの発生の要因として精神状態が大きく関わっていることが考えられる。フレイルの定義では身体機能を主軸としているが、対象の集団が意欲の高い健常高齢者である為、本研究では身体計測や運動機能にあまり差がみられなかったと考えられる。精神心理的問題が前段階となることで、身体機能の低下につながり、フレイルへと進展する可能性がある。
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