研究課題/領域番号 |
15K01736
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研究機関 | 兵庫医科大学 |
研究代表者 |
鈴木 敬一郎 兵庫医科大学, 医学部, 教授 (70221322)
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研究分担者 |
崎山 晴彦 兵庫医科大学, 医学部, 講師 (30508958)
江口 裕伸 兵庫医科大学, 医学部, 講師 (60351798)
吉原 大作 兵庫医科大学, 医学部, 助教 (00567266)
藤原 範子 兵庫医科大学, 医学部, 准教授 (10368532)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | SOD1 / NASH / 酸化ストレス / 鉄代謝 / 脂肪肝 |
研究実績の概要 |
肝臓や腎臓に多く発現するCu,Zn-スーパーオキシドディスムターゼ(SOD1)は、スーパーオキシドラジカルを過酸化水素と酸素に変換する酵素で、酸化ストレスから生体を守る重要な役目を有している。SOD1を欠損したマウス(SOD1KOマウス)は正常に生まれるものの、脂肪肝から肝硬変ひいては肝癌を引き起こすことが報告されている。一般的には糖質や脂質の過剰摂取による肥満から脂肪肝になると考えられているが、SOD1KOマウスは普通食でも10週令で脂肪肝になり、肥満を伴わないまま肝硬変を経て肝癌に進む。つまり、当マウスは肥満を経ないNASH自然発症モデルマウスと言える。さらに、我々はSOD1KOマウスが鉄代謝異常を引き起こし、肝臓や腎臓に鉄が沈着することを明らかにしている。NASH発症には脂肪肝に加え酸化ストレスやインスリン抵抗性などの要因が必要だと考えられているが、発症機序は不明な点が多い。近年NASH患者において鉄代謝異常が報告されており、低鉄食でNASHが改善されることが報告されるようになった。しかし、肝硬変と鉄代謝異常に関する研究報告は国内外において少なく、詳細な分子機構はほとんど解明されていない。 また脂肪肝では過剰なコラーゲン産生が肝硬変の原因となる。コラーゲンを分解する酵素が金属プロテアーゼであるMMP(Matrix Metalloproteinase)である。MMPの酵素活性が低下すれば過剰にコラーゲンが蓄積するわけだが、肝臓における鉄量の増大は亜鉛量を低下させることが知られており、MMP活性の低下を引き起こす可能性がある。従って本課題では、肝硬変の分子機序を解明する為に、SOD1KOマウスを用いて鉄と亜鉛のバランスを考慮した上で、コラーゲンの合成と分解の両面から解析することにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまで、SOD1欠損マウスの肝臓では通常食においても脂肪肝になりやがて肝硬変、肝がんを経て死亡することが報告されてきた。脂肪肝になるにはSOD1欠損マウスの週齢が進んだ個体で報告例が多いが今回我々は、予想以上に若いマウスでも肝臓に脂肪滴が溜まることを見出した。さらに、肝臓にコラーゲンが蓄積することで脂肪肝が肝線維化を引き起こしていることも確認された。その原因の一つとして、コラーゲン合成と分解のバランスが崩れている可能性を検討した。 結果、分解能が著しく低下していたわけであるがそれは分解酵素である金属プロテアーゼ(MMP)の活性能が低下していた為であった。これらの結果は、本研究が当初の予定通り進捗していることを示すといえる。
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今後の研究の推進方策 |
コラーゲンの分解能が低下していたのはMMPの活性が低下していたからであるが、MMPの活性には金属が必須である。SOD1も銅と亜鉛が活性やタンパク質の安定性には必要であり、SOD1欠損マウスでは金属代謝そのものが異常な状態になっていると予想される。 このため、今後は金属代謝とMMP活性低下との関連性を検討していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画していた通りに実験は進んだが、端数が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
概ね実験は計画通りに進んでいるので、当初の計画に従って実験を進めていく。 主な使用としては、動物の購入費・維持費、遺伝子工学関連試薬、細胞培養関連試薬、プラスチック類などの消耗品などである。
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